ムービーショウ。(6)【ルドレノ】

ルドレノ

 

 

『LAST FREEDOM』

製作:XXXXXX、監督:XXXXXX

キャスト:XXXXX、XXXXX、XXXXX、XXXXX

ストーリー:街には荒くれ者の少年達が住み着いていた。毎日悪行や喧嘩ばかりを繰り返していた彼らは、ある日大きな事件を起こし街から追い出されることになってしまう。住所も職業も持たない彼らは、街を転々としながらも自由気ままに暮らしていく。しかし行く街行く街で目を付けられ、最後には仲間が襲われるという事態に陥ってしまう。徐々に崩壊していく仲間達、そこに残された虚無感。自由の限界を感じた彼らは、更生施設の元に社会復帰を試みるが、街はそれを受け入れてはくれなかった…。(126分)

 

 

 

同じ組織の中にいるはずなのに、まるでレノを見かけない。

そんな日が続いていた。

新入りとなっているルードの周囲にいるのは、同じく新入りの部類に入るゴロツキ達である。とはいえ、勿論ルードよりもずっと先輩には当たる。

数日間その顔ぶれに触れて分かったことだが、どうやら初日に会ったあのゴツイ男やノッポの男は、この組織の中でも上に属する人間らしかった。

ゴロツキの組織にそんなものがあるものかと思ったが、どうやら見えない境界線というのがあるらしい。

彼らが仕事と称しているのは、勿論犯罪まがいの行為だった。いや、犯罪そのものと言っても過言ではないだろう。

但し、その内容には各種あり、どうやら上に属する人間ほど大きな“仕事”をしているようだった。つまり、ルードやルードの周囲にいるゴロツキ達は、さほど大きな山には手をつけていないのである。

ただし、号令がかかった時だけは全員でその仕事にかかるらしい。丁度、あの初日にように。

段々と見えてきた。

ルードはそんなふうに思う。

この組織の壊滅を考えるとすれば、主には上に属するゴロツキを叩くということになるだろう。

恐らく、部下に当たるゴロツキ達はそれほどの豪気を有していない。だから、纏め役さえいなければ組織としては成立しなくなる。そうなってしまえば、個々のゴロツキ達を潰すのは簡単なことだろう。

とはいえ、指令はあくまでも壊滅である。

つまりそれは、たった一人でも逃してはいけないという意であろう。

そうなると、一瞬にして全滅させるような術が望ましいということになる。

方法は色々あるが、問題はその時間や場所だ。

一堂に会するという状況はさほど無いから、まずはそれを作り出す必要があるが、ルードの権限ではそれはとても無理な話だった。

―――――レノを頼るほかない…。

そう思うが、レノとは顔を合わせる機会も無いし、ちゃんと考えているのかどうかを問いただす時間もない。

恐らくレノは上層に属するゴロツキ達と共に行動しているのだろうから、その監視めいた空間に入り込むのは至難の業である。

―――――どうしたものか…。

期限は刻一刻と迫っているのに。

「おい、新入り。そういやお前、前はどこにいたんだ?レノさん直々に人を連れてくるなんて、お前よっぽどのヤリ手なんだろ?」

夜の酒盛りの中、ふいにそう聞かれ、ルードは思考の中からリターンした。

周囲を囲んでいるのは勿論下っ端のゴロツキ達である。

ヒゲ面の男と、ソバカスだらけの男。一見してみれば、ゴロツキというよりも単なる小汚い青年というふうである。

ルードは二人を交互に見遣りながら、適当な、しかし若干は過去の真実を交えた返答をした。

己の過去については、以前レノにも少し話したことがある。勿論全てを話したわけではないが、大体レノは予測をつけただろうと思う。

過去ルードがいたのは、Xよりもずっと厳しい上下関係のある組織だった。

Xとは違い、表向きはマトモな仕事をしており、裏で悪行を働いているという組織。名前は幾通りもあってどれが本当の名前なのか未だにルードも知らないでいる。

その組織が悪行を働いても尚生きながらえている理由は、ひとえにそのネットワークのためだろう。

その組織は、成金達と良く繋がっていた。だからこそ金に困ることもなければ世間的に困ることもない。恐らく、今でもどこかでひっそりと根を張っているに違いない。

ルードはその組織の末端におり、上層部の人間のことは良く知らなかった。

成金そのものがその組織のトップであるという噂もあったが、実際はどうなのか分からない。

仕事はいつも上からの指示でやってきて、指示された通りをこなせば良かったから、その仕事の全容が実際はどのようなものであるかという部分は分からなかった。

分からないことだらけの組織だったが、しかし分かっていたこともある。それは、その組織の悪行のターゲットが一般市民ではないという部分。

その組織の敵は、金に物を言わせて豪奢を振るう上層階級の人間達だったのだ。

ある意味、義賊のようなものである。勿論、その行為自体は許されるようなものではなかったけれど。

筋は、通っていたと思う。

何でもありという無茶苦茶なノンルールの世界ではなかった。

だから、ルードはこのXに対してどうしても違和感を覚えてしまう。彼らのやっていることは、過去ルードが行ってきた悪行とはまるで違うものだったから。

「…大した過去じゃない」

ルードはその内容を要約して告げると、最後にそう締めくくった。

もしかしたらXの要員である彼らの反感を買うかもしれないと思ったが、意外にもそういうことはなく、彼らはふうん、と聞き入っていたものである。

「そりゃ厳しい世界にいたもんだな。Xとは大違いだ。ここは良いぜ、窮屈でもなく退屈でもなく自由でノンルール。最高だぜ。なあ?」

ソバカスがそう言い、ヒゲが同調するように頷く。

「そりゃ時々はさ、キレそうになるときだってあらあな。こんだけ人数が揃ってんだもんよ。でもまあお互い上手くやってきゃ問題ないし。お前も早く慣れろよな、ハゲ」

「“ハゲ”…」

その言葉に思わず反応してしまうと、ソバカスはハハハと笑って、悪い悪い、ルードだっけか?、と言い直した。どうやら名前は覚えてくれているらしい。

ルードがその言葉に反応したのは、別に嫌だったからというわけではない。ただ、ふいにレノのことを思い出したのである。

 

 

 

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