夜明けの部屋【セフィザ】

セフィザ

インフォメーション

■SWEET●SHORT

夏の夜明けは眠れない。でも、それで良いのだ。 久々のセフィ視点! ワンシーンです♪


夜明けの部屋:セフィロス×ザックス

明け方、帰宅をする。
既に空は白み始めていて、鳥はぴちぴちと囀りを始めている。

その声を聞いたとき、ああ、これはもう眠れないな、とセフィロスは思った。明るいし五月蝿いし、そんな中で眠れるほどセフィロスの精神は図太くはない。意外と音がすると目が覚めてしまうのだ。

今日は眠るのは諦めようか。
そんなことを考えながら帰宅をした。

しかし、帰宅をすると、不測の事態が起こっており、セフィロスはその事実に少しばかり驚いたりする。

いつもであれば、シンと静かで冷たい我が家なのに、今日は何だか違う。冷たさも感じないし、そもそも静かではないのである。
いや、それ以前に、鍵が開いていることは不自然だろう。

泥棒でも入ったか。
普通だったらそう考えるところだが、セフィロスはそんなふうには考えなかった。というのも、なんとなくその理由が分かっていたからだ。

実は先日、ザックスにこの家の合鍵を渡していたのである。
それで、いつでも来て良いと言っておいたから、これはきっとザックスが来たのだろうとすぐに分かった。

どんなに冷たい部屋でも、人がいればそこに熱が起こり、そんなふうに冷たくは感じないものである。

「ザックス?」

家に入り込んだセフィロスは、その名前を呼びながらそっと足を進めた。
しかし返事は無く、ただ、存在がある、という雰囲気だけが感じられる。

しかし暫くすると、寝室にザックスの姿を見つけることができた。
ザックスはといえば、何たる事か、他人のベットでどうどうと眠っている。しかも大幅に腹部を出してぐうすかと眠っているものだから、セフィロスは思わず呆れてしまったものである。
とはいえ、そういうあけっぴろげなところが彼の良いところだと思ってはいるのだが。

「全く……」

セフィロスはため息をつきながら、ザックスの上にそっと毛布をかける。その僅かな動作に変化を感じたらしいザックスは「う~ん」などと唸りながら寝返りを打ったが、別段起きる気配は感じられない。

「幸せなやつだな」

セフィロスは少し笑ってそう言うと、ザックスの隣に腰をおろした。
そうして、その寝顔をまじまじと見つめる。

ザックスの寝顔は、どこからどう見てもしっかりした青年のもので、別段そこに色気があるだとかそういうふうではない。しかしセフィロスにとってその無防備で開けっぴろげな寝顔は、心をホッとさせる効果があった。

彼は、セフィロスに何の防御線も張らない。
取り繕う事も、変に緊張の色を見せる事も無い。
その事実が、セフィロスをほっとさせる。

英雄じゃなくたって、
例え弱いところがあったって、
それでもセフィロスはセフィロスだから。

――そう、彼は認めてくれているから。

「……どこにも行かないでくれ」

セフィロスはそっとそう呟くと、ザックスの手をきゅっ、と握る。

ザックスはそれでも起きなかったが、ただ、握られた手をきゅっ、と握り返した。その無意識の行動は、まるで自然に二人を結ぶ絆のようだった。

既に空は明るくなり始めていて、鳥はぴちぴちと囀りを始めている。
きっと、これはもう眠れないだろう。
けれどそれも良いかもしれない。

この手を握っていられるならば。

END

タイトルとURLをコピーしました