軍配はこちらに【セフィクラ】

セフィクラ

■セフィクラ:SWEET■
「奇襲のキス」SC版のような感じ!
何だかんだいってクラウドは最強なのだった。


 

 

「ねえ、セフィロス。セフィロスってば!」

「何だ一体…煩いやつだな」

 

セフィロスの生息地…もとい、部屋。
そこでの逢瀬はいつも同じ風景、いつも同じ会話。
ともすればマンネリという言葉で説明付いてしまいそうなそんな日常について、クラウドはそれでも結構に満足をしている。

大好きなセフィロスは一緒にいてもなかなか話を聞いてくれず、時折気づくと一人で喋っていることも多々…まあそれは悲しい現実だったが、それでも本気で不満を言うほどじゃない。

クラウドは、真面目なセフィロスも、煩そうにするセフィロスも、どういうセフィロスも大体は好きだった。唯一好きになれないのは怒った時のセフィロスである。まっとうなことを言うものだから反論すらできない。だから嫌い。…まあ勝手な言い分だとは分かっているのだが。

 

「セフィロス、あのさ。ちょっと俺の顔見ててくれない?」

「顔?」

 

唐突にそういわれたセフィロスは、言われたままに、真横にいるクラウドの顔をじっと覗き込んだ。が、そうした次の瞬間に、驚くべき事態に遭遇したものである。

ガチッ!

…そう音が響く。
そして、二人は同時に手で口のあたりを覆った。

 

「痛っ…!」

「あいたっ!」

「ク、クラウド、お前な…」

「ご、ごめんっ」

 

クラウドはほぼ涙目になると、もうどうして良いか分からないという具合に顔を赤らめる。それもそのはず、クラウドはミッションに失敗してしまったのだ。そう、不意打ちのキスというミッションに。

不意打ちのキスが綺麗に決まるなら、それはそれでカッコイイだろう。がしかし、初歩的に歯がガチッ、なんていって当たった日には、それはもう目も当てられない。相手が初心者ならまだしも、非常に残念なことに目の前にいるのはセフィロスなのである。

そんな具合だったから、クラウドが落ち込んだのは言うまでもない。
が、不思議なことにセフィロスの方はそんなクラウドの様子を面白がっていた。

 

「全く…このヘタクソ」

「…ごめんなさい」

 

しょんぼりとするクラウドを見てふっと笑ったセフィロスは、その頬に綺麗にキスをすると、突然のようにクラウドを抱き上げる。その予想外の出来事に驚いたクラウドは、突然襲ってきた浮遊感に「うわっ!」と声を上げた。

世に言う、お姫様だっこ。
それをされたクラウドが「あわわわ!」と口をもごもごさせている間に、セフィロスはサクッと寝室へと移動していく。勿論、クラウドを連れて。

たどり着いた寝室はひんやりと冷たく、その部屋でじっとしているベットもやはりまた冷たい。そんな冷たいベットの上にドサリと落とされたクラウドは、この急展開に目を回しながらもセフィロスを見遣った。

 

「あ、あの…セフィロス?」

 

クラウドの視線の先にいるセフィロスは、何やら服を脱ぎ始めている。コートを脱ぎ払ったその下は既に素肌で、それが何だか妙に生々しく感じられた。
ひんやりと冷たい部屋なのに、何だか急に気温が上がったような気分になるのは…恐らくクラウドの緊張のためだろう。

 

「ここまできて怖気づいたか?」

「え…あ、あの、俺…」

 

セフィロスはベットに片膝をつくと、クラウドを覆うようにしてベットに重心を預けた。
至近距離で、目が合う。

まさかこんな事態に発展するとは思っても見なかったクラウドは、この状況に対応できないままにひたすらドキドキしている。クラウドにとって、あの不意打ちのキスは単なる遊びのつもりだったのだ。しかしどうやらその遊びは、失敗した挙句にセフィロスの本気に火をつけたらしい。

 

「馬鹿者…お前の方が誘ってきたんだろう?」

「ち、違うよっ。俺、そういうつもりなんて全然…」

「…じゃあ、止めるか?」

「えっ」

 

ゆったりと微笑むセフィロスは、完璧な余裕を携えてクラウドの体を押し倒している。そんなふうに聞きながらも、逃がすつもりは毛頭ないといった様子だ。

とはいえ、クラウドもその問いに「止めたい」とは答えられなかったものである。だって、正直なところ止めたくはない。こんなつもりではなかったとはいえ、相手が好きな人には代わり無いのだから。

 

「…止めたくない、けど」

「だったら大人しくしていろ。俺が手本を見せてやる」

「え?…あっ、ちょ……んっ、っ…」

 

セフィロスの言う手本とやらは、確かにすばらしかった。それはクラウドをとろん、とさせるくらいには高度で、ミッション失敗の兵士と比べていかに英雄がすばらしいミッション率を誇るかが伺い知れるところである。

…とはいえ。

マンネリという言葉で片付けられてしまいそうなこの日常の中で、セフィロスにやる気を起こさせるだけのパワーを持っていることについては、クラウドに軍配が上がるかもしれない。

 

「ねえ、セフィロス。セフィロスってば」

 

昨日も、今日も、そして多分これからも。
その部屋には、クラウドのそんな声が響いていく。

 

END

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