「はあ…はあ…」
疲れたような息遣いの中、クラウドはそっと目を開けた。
ちょっとでも顔を起こせば、そこにはセフィロスの顔がある。それでも何だか今は見る気分になれなかった。
きっとセフィロスは今の自分の一部始終を見ていたのだろうし、それを考えると顔から火が出そうなほどに恥ずかしい。これだからこの体勢は嫌なんだ、とクラウドは思う。顔なんて隠すに隠しきれない。
「クラウド、顔を見せろ」
そう言って手を伸ばしてくるセフィロスに、クラウドは顔を背ける。
「そう拗ねるな」
「拗ねてるんじゃないよ」
「じゃあ何だ。…そんなに恥ずかしいか?」
そうズバリ言われて、クラウドは赤面する。そんなのは勿論恥ずかしいに決まってるのだ。
今までの自分を見ていたセフィロスが、その間に何かを考えていたのかと思うと、それがとても恥ずかしい。
しかしそんなクラウドの心の内などお構いナシで、セフィロスはふっと笑った。
「そんな今更恥ずかしがるな。いつもの事だろう」
「もう良いよ」
ぷい、と反対側に顔を背けながらそう言うと、セフィロスは可笑しくて仕方ないのか、声などを上げて笑った。クラウドはムッツリする。
けれどそれも一瞬の話で、セフィロスの手は次なる動作を始めた。セフィロスの身体にべっとりとついてしまったクラウドの精液を拭いながら、同じくそれでヌルヌルとした指先でさっきは拒否されたその部分を弄る。
そうした瞬間、膨れていたはずのクラウドは咄嗟にビクンと身体を震わせた。
指の進入を拒否するように跳ね返す肌の締りを強引に抉じ開けると、グイグイと締め付ける体内の奥深くまでゆっくりと挿入する。
「あっ」
途端に反応するクラウドに、セフィロスはわざとらしく足を更に高く持ち上げた。
「やだってば!…もう、あ…っ」
「そんな事言って、さっきだってこのままだったじゃないか」
そう反論しながらも、すっぽりと受け入れた体内を弄り回す。少し上下させて慣らした後に、体液と精液とでぐちゃぐちゃになった指をすっぽりと引き抜くと、もう一本の指を添えて再び挿入した。今度は割と締め付けが激しい。
それを強引に慣らすように、今度は最初からピッチを上げる。最初こそ厳しかったそこも、こうなれば少しは緩くなって待ち構えているかのようになる。
「ああっ、は…あ」
「ん?これじゃ満足いかないか?」
そう言って、もっと深くまで押し入れると、更に深く上下させる。
「ん、んんっ…」
「何だ、まだ違うか?」
少し余裕のありそうな声音に、セフィロスはそう言って角度を変えては入れなおしたりする。その度にクラウドの口からは喘ぎ声が漏れて、それは部屋に響き渡る。
さっき一旦は達したクラウドにとっては、それは休みの無い愛撫の連続といった感じで、イク寸前とはまた違った意味で厳しかった。それなのにセフィロスはまだまだといったふうに攻め続ける。
その内、ずっぽりと埋め込んだままの状態で、体内をかき混ぜるように指の先端だけが蠢き始めた。言い表せない感覚になって、クラウドは思わず腰を浮かせる。
「あ、やぁあっ、そこ、やっ…っ」
「これが良いのか?」
そう一人で納得して、セフィロスはその奥の部分を強くグルグルと弄り回した。大きく開かれた足の向こう側にクラウドの顔が見える。嫌がっているような、それでいて恍惚とした表情。
汗でじっとりした太股に手をかけると、それを見ながら根元から捻るように手を動かす。それが身体の芯をジンとさせる。
「もう、い…いい、か、らっ」
そう漏らしながら腕を交差させて顔を覆うクラウドに、
「どうした、ちゃんと言えないのか?」
と、ほぼ苛め状態の言葉をセフィロスがかける。
欲しいことくらい分かっていたが、それでもついそういう言葉を口にしてしまう。それはセフィロスから言わせれば、クラウドが言わせているのだ、という解釈だった。
このような行為を初めてしたとき、こんなことは考えられなかったものである。
初めてのとき、クラウドは痛いだの何だのと言って、なかなか先に進まなかった。その上泣き喚くわという状態で、好きだとは言っても身体の関係など持てないのではないかと思っていたのだ。
それでも時が流れればこうまで変わる。それとも感情が変えてしまったのか。
そんな事を考えながらセフィロスの指は忙しく突き動いていた。
「ね、ねえ…セフィロス…っ」
「ん?」
「も、いいよ…い、から…入れ…」
「ふうん?」
そう声がした事で、セフィロスはやっとその指を抜き出した。ぬっぷりと濡れそぼった指で、今まで随分と慣れさせたその付近をゆっくりと引き広げる。
それから上体を起こしたセフィロスは、今迄何もしないままだった自分の下半身をその広げた部分に押し当てた。が、先端だけでやはり付き返されてしまう。
それでも容赦なく力を強めると、呻くクラウドの声を耳にしながら一気に奥まで突き刺した。
「あっあっ…!」
「最初が気持ち良いんだろ、お前?」
「そんな、事…っ!」
そんな会話をしながら、セフィロスは腰を揺り動かした。なるべく強く、密着した部分が擦れるくらいに突いてやる。
途端に声を張り上げたクラウドの顔から交差された腕を引き剥がすと、その手首をグイッと握り込む。
「やだ、やだっ!見るな、よっ!」
「良いだろう?俺にも楽しませろ」
セフィロスの視線はクラウドの顔だけに集中した。もうかなり表情の強張りも緩んでいて、嫌だという割には可愛い声などを上げる。
それでもちょっとした抵抗の色を残しているのが、どこかの女とは違う。しっかりした男の身体で、柔らかさも女には劣る。それでもセフィロスがクラウドを選ぶのには、色々とワケがあった。
大半は普段の雰囲気だとかだったけれど、こうした情事の間に見せる表情もその内の一つだった。
「ぁあっ、セ、フィロ…ス…っ」
「何だ、クラウド?」
息遣いが乱れる中、クラウドはセフィロスの名を呼び続ける。しかし、セフィロスの質問に返る言葉は無い。
「ん…んんっ、セフィ…」
まだそう名を呼ぶクラウドは、ふと顔を背けた先で目に入ったセフィロスの腕に、小さくキスなどをする。それは勿論クラウドの手首を押さえている腕である。
「クラウド…」
セフィロスはその動作を見て、何となく顔が緩んだ。口には出さないものの、愛しいと思う。自分に貫かれながら、そうやって悦びを与えてくれるクラウドが。
それはセフィロスにとって何だか不思議な感覚だった。なにしろクラウドは、セフィロスから見れば単なる子供でしかない少年なのだから。
しかしそれがいつの間にか、“単なる”といえるような存在ではなくなっている。性行為は基本的には別口の感情からくる欲求だったが、たまにこうして、こういう時だから分かることや感じる事もあった。
「俺からも少しお返ししようか」
そう呟いて、セフィロスは今まで以上に上体を上げた。それに合わせて、クラウドの身体は更に腰を浮かせた状態になり、それを支える為に自然と手首から手が離れる。
しっかりと抱え込んだ両足を後ろに流すようにして、急な体勢のまま、セフィロスはクラウドの身体に変わらない律動を加えた。
「あああぁっ!」
角度が変わり奥深くまで抉られるようになった身体は、クラウドをさらに喘がせた。ただでさえ強く突かれているのに、こんなふうにされたら身体が壊れてしまいそうな気がする。
けれど、度重なる行為でセフィロスを受け入れてきたクラウドの身体は、そう貧弱でもなかった。
「あっ!ああっ!」
身体が軋むように揺れる。
繋がったそこから先がジンジンして、もう何も考えられなかった。名前を呼ぶことすら出来ないまま、ただただ喘ぎ続ける。
その様子は、知らずセフィロスの昂ぶりを手助けしていたらしい。
「く、クラウド…っ」
絶頂の予感を覚えたセフィロスは、俄か顔を歪ませ、動作を早くする。今まではっきりしていた感覚も、その頃は少しばかり曖昧になっていた。
「良い…か、クラウドっ」
そう確認するように降り注いだ声に、クラウドはかくかくと首を縦に振る。何が何だかよく分からないけれど、セフィロスも限界なんだ、ということだけが分かった。
そうした後、しばらく強く律動が続き、やがてクラウドは体内に流れ込む感じを覚える。
ビクビクと痙攣する感覚と共に。