RUM【セフィクラ】

セフィクラ
■SERIOUS●SHORT

歳の差恋愛の壁。それがクラには悩みだったけど。


RUM:セフィロス×クラウド

 

時々思うことがある。

それは何かというと、例えばこういう会話をしたときに感じることだったりする。

「そういえば昔のミッドガルといえば、まだまだ閑散としてたものだな」

「そうなの?何だか想像できないよ」

「…お前はまだ若いからな」

こういう会話をしたとき、俺はちょっとムッとしたりする。何故って、いかにも差を感じるからだ。

セフィロスと俺は結構年が離れてる。

俗に言う年の差カップルってやつらしい。

それはそれとしても、俺だって十何年か生きてきてるわけで、しかも神羅は仕事そのものだし、そういうちょっとした会話で差を感じたり“お前には分からないだろう”って言われるのは、やっぱり嫌だと思う。

かといって、それに頑張ってついていこうと思っても俺には知識が無くて、セフィロスと最後の最後まで対等に話をするなんて難しかったりするんだけど…。

でも、こういうジレンマってどうしたら解決するもんなんだろう?

俺はそんなことを考えたりする。

 

 

 

訓練の合間のちょっとした休憩時間に、俺は良く自販機にジュースなんかを買いにいく。その間、同期の兵士仲間なんかは固まって色んな話をしていたりするけど、俺はたまたま聞いたその話に何だか妙に嫌な感じがした。

だって、その内容といったら俺が悩んでることと全く一緒だったから。

「年上の彼女ってどーなん?」

「良いよ~年上は。頼れるし、甘えられるしさ~」

俺はついついその円の中に入り込んで聞き耳なんかを立てる。

話をしているのは、最近年上の彼女ができたとかいう男だ。っていうか、どこでそんな出会いがあったんだか俺にはそっちの方が不思議のような気もするけど。

とにかくそいつの言うことには年上は相当良いらしい。俺はついつい自分と照らし合わせてみて、確かにそうかもしれないけど、と首を捻った。

確かにセフィロスは頼れるし、甘え…られるけど。

でもそれとはちょっと違うような……?

俺が勝手にそんなことを考えて首を捻ったり眉をしかめているうちに、会話はかなり進んでいる。

「でも難点はあるよな。楽だけど、こっちがデカく出れないっていうかさ。男としてはちょっと辛いところもあるかも。しかもほら、子供扱い激しいしさ」

その一言に、俺はつい、

「そうなんだよ、それだよ!」

と、叫んでいた。

――――――――注目の的になったのは言うまでも無い。

「何だクラウド、お前も年上彼女もちなん?」

「えっ!ち…違うよ。違うけどさ…」

いや、確かに年上だけど、彼女じゃないだろう。決して。うん。

俺は適当にはぐらかして、他の話題を振ってその場を切り抜けた。まさかセフィロスとそういう関係ですなんて公言できない。というか、言っても信じてくれないだろうけど。

その後もその年上談義はずっと続いたけれど、後半、俺の頭の中にその会話は入ってこなかった。その間俺が何をしていたかというと、やっぱり考え事だ。

俺と同じ歳の男が、年上の恋人に対してそう思ってる。ということは、俺がこういうふうにセフィロスに対して感じていてもそれは別に変じゃないってことだ。

でも、その話を聞く限り、年上の人はやっぱりそういうふうに俺たちのことを見るわけで、それはセフィロスが悪いわけでもない。

でも俺は、そういうのを「仕方無い」なんて言いたくないと思っていた。だってこのままじゃあまりにも不公平だと思う。別にセフィロスの知っていること全てを知りたいとは思わないけれど、それでもその知識とか経験の差で嫌な気分になるのは辛い。

何とかできないものかと考えているうちに、俺はあることを思いついた。

 

 

 

セフィロスが会おうと言ってくるのを見計らって、俺はある物体をたんまり集めこんだ。因みにセフィロスにはプレゼントがあるだとか何だとか言ってある。セフィロスはそれを聞いて喜んでくれたけど、それは大間違いだった。

俺はセフィロスに会うなり両手に抱えたその物体をさも嬉しそうにポン、と渡すと、

「セフィロスの為に買ってきたんだ、残さないでよ」

そう念を押した。

セフィロスは箱に入っているその物体を見てギョッとすると、俺に向かってこんなふうに言う。

「クラウド、お前な…俺はそういうのはあんまり…」

「えー…嫌いなのか?」

こういう時はすかさず、悲しそうな顔をする。勿論、これもワザとやるんだ。

セフィロスはそんな顔をした俺に焦ったように「いや」とか言うと、恐る恐るその箱を受け取った。俺はその様子を見ながら笑顔を作ったけど、心の中ではにやけていた。

だって俺は知ってたんだ。

セフィロスが、俺の渡した箱の中身がすごく嫌いだということ。それは知っていたけど、俺は敢えて箱を渡した。

「セフィロス、開けてよ」

「あ、ああ…」

慣れない手つきで箱を開け始めたセフィロスは、その箱を完璧に開けた後、更にその中身を見てゲッソリとした顔をする。

箱の中身――――――――――それは…。

「な、美味しそうだろ!」

箱の中身はラムレーズンアイスだった。アイスという時点でセフィロスは苦手分野だし、ラムレーズンというのは好き嫌いが激しいものだから微妙だ。しかもこれはアイスだからなるべく早く食べなければいけないわけで、セフィロスからしたら凄く迷惑な品物なのだ。

俺はにっこり笑って、休みの日にわざわざ買いにいったことを伝えた。はっきりいって極悪っぽいけど、俺はこういうことくらいしかセフィロスより強いことはできないだろうと思う。

セフィロスは引きつったような顔をしつつも笑っていた。かなり無理があるのが目に見えて分かる。

けれどセフィロスは何でもないかのように早速皿を出すと、それにラムレーズンアイスを小分けし出した。勿論、俺の分もある。

「じゃあ一緒に」

そう言うので俺は一緒になってアイスを食べた。隣のセフィロスはかなりゲッソリしていたけれど、それは見ないようにして、ただひたすらアイスを頬張る。途中セフィロスは「うっ」とか何とか言っていたけどそれも勿論知らないふりで躱す。

「それにしても何でいきなりこんなものを買ってきたんだ?」

ようやく皿の上のアイスが終わろうとしたときセフィロスはそんなことを言い出した。何でと言われれば、その答えは至って単純だけど、俺はそれをそのまま口にするわけにもいかなくて「何となく」と答える。

そんな俺を見てセフィロスは首を傾げた。しかも、こともあろうにこんなことを口にした。

「お前は子供みたいな奴だな」

「…何だよ、それ」

セフィロスがそう言った背景にどういう図式があるのかは分かっている。つまりこういうことだ。

アイス=子供のおやつ的存在=俺は子供、どうせこんな具合なんだろう。

俺はムッとして反論し始めた。

「俺の周りの人は皆好きで食べたりするよ。セフィロスには分からないだろうけどっ」

「それはお前の同僚だろう?どうせまだ子供の範囲の連中だ」

「いちいち子供子供って…」

俺は明らかに機嫌が悪くなった。だってそうだ、子供だとかいうけど大人でも好きな人は好きだろうし、大体「大人」とか「子供」の境界ってどこにあるんだよ。

そういうふうに、セフィロスの範囲外のものを全て「子供」って言葉で括られるのはすごく悔しいと思う。けれどそれを悔しいと感じるのは、もしかしたら俺が実際その子供の領域を過ぎていない証拠なのかもしれないけれど…。

とにかく俺の良いアイディアは何だか段々と雲行きが怪しくなってきていた。

俺は最初、セフィロスの苦手な分野でセフィロスより優位に立ってやろうと思っていたのに、セフィロスはそれですら俺の嫌いな話題に振ってしまうんだ。

どうしてこうなってしまうんだろう?

それは俺が「大人」にならないと解決なんかしないんだろうか?

そんなことをもうずっと考えて今日はこんなことまでしたのに、やっぱり俺はまだ同じことで悩んでいる。

「もういいよ。セフィロスにとっては俺は一生、子供なんだから」

答えも見つからなくてそう言うと、俺はガシャン、と音を立てて皿をテーブルの上に置いた。

そんな俺の不機嫌さに気付いてセフィロスは眉をしかめたけど、口からは正反対に近い言葉が流れる。その言葉に俺は少し躊躇った。

「そうだな」

「……」

つい閉口してしまう。何だってそんなふうに肯定してしまうんだ。そう断定されてしまったら、もうこれ以上悪あがきもできないのに。

俺の中では、辛いという気持ちに似たものがグルグル回っていた。

俺は一生セフィロスには近付かないし、大人にもなれないんだ。だってそうセフィロスが言ったんだから。

そう思うと、今日やったことも、それについてこれからも悩むだろうということも、全てセフィロスに見透かされていそうで気分が悪かった。

じゃあどうしたら良いんだろう――――――そう思いながらもそれを口に出すことができず、俺はすっと立ち上がると、さっとセフィロスから遠ざかる。

今此処で帰っても、どうせ悩みは解消することがないけど、それでも何だかモヤモヤが消えなくて。

「帰るのか?」

そう言われて、俺は「帰るよ」と答える。

もしかしたら何かフォローの言葉一つくらいかけてくれるのかなと思ったけど、セフィロスはそんな事はしなかった。

その代わり、こんなことを言った。

「俺を大人だと思うか?」

何だ、それは?

そう思ったけれど、言葉をそのまま考えると答えはYESでしかない。

俺がそのままの返事をそっと返すとセフィロスは、そうか、と呟いて少し笑った。

何を笑う必要なんかあるんだ――――――そう思って俺はますます不機嫌になる。

けど、セフィロスは突然こんなことを言い始めた。

「俺はそれなりに生きてきたし、それなりの経験も積んだつもりだ。戦闘の仕方を覚えたのも経験からだ。でも、それでも上には上がいると感じることがある」

「え…」

セフィロスより上の人間なんて、そうそう思いつかない。

「お前は今、俺が言った言葉に不機嫌になったな。それは子供だという言葉じゃないか?」

俺の方をチラッと見てそう言ったセフィロスは、俺の答えを待たずに、でも、と言葉を続けた。

「この俺も、誰かにとってみれば今でも尚、そういうものだ。子供に変わりない」

「…意味、分からないよ」

「分からないか?…つまり早い話が年齢の差はいつまでたっても縮まることがないということだ」

1年経っても、5年経っても、10年経っても、俺とセフィロスの年齢の差は同じまま…一生変わることが無い。セフィロスはそんなことを言って、これは誰にとっても同じことだ、と締めくくった。

それを聞いて、俺は先ほどのセフィロスの言葉に初めて納得した。

セフィロスにとって俺は一生子供だという言葉に、さっきセフィロスは「そうだ」と答えた―――――――それに。

「クラウド、お前がそれに不満を感じたとしても、誰だって同じことだぞ。お前が法律上の大人になろうと、それは変わらない」

やっと皿をテーブルに置いたセフィロスは、リラックスしたように背をもたれると、目を瞑ってそう言う。

俺はそれを見つめながら考えていた。

だったら俺のこのジレンマは意味の無いものなんだろうか。

そうだとしても、ジレンマを感じずにいられないじゃないか。

このジレンマはいつになったら消えるんだろうかと考えてもセフィロスの言うことによればそれは一生消えないわけで、これでは堂々巡りになってしまう。

セフィロスのことは好きだけど、此処にくるたびにそういう事を感じて、そういうことにモヤモヤして、このまま過ごしていくんだろうか。

そんな思考を巡らせていた俺に、目をそっと開けたセフィロスが笑った。

「悩むことはないぞ、クラウド。だから俺とお前はこういう関係にあるんだろう?」

「こういう関係?」

それはつまり、恋人関係ということだろうか。

でも恋人関係と、ジレンマを感じることにどんな関係があるのか、俺には良く分からない。

結局、意味が分からないと告げるしかなくてそうしてみると、セフィロスは俺に手を差し伸べて、近くに来るようにと無言で言ってきた。俺がそれに応えてその手をとると、すぐさまぐっと強い力で引き寄せられる。

さっきよりもずっと近い距離でセフィロスの顔を見つめると、それはどことなく優しかった。決して笑っているわけではなかったけど、それでも優しく感じる。

そう思ったとき、俺はセフィロスの言ったことが少し分かった気がした。

誰かが見たら普通にしか見えないその表情を優しいと感じられたのは、きっと経験からなんだ。

セフィロスと過ごしてきた経験が、それを教えてくれたんだろう。

「俺とお前の距離は遠いか?」

そっと聞こえた声に、俺は首を横に振った。

実際の距離じゃなくて、心の距離。

それは今、とても近いと思う。

「俺が今、お前を子供だと言ったら…お前はまた不機嫌になるか?」

その次に聞こえたそんな声にも、俺は首を横に振っていた。さっきまであれほど拘っていたことだったのに、何故か無意識にそうしていたんだ。

その俺の反応を見たセフィロスはやはり無表情にみえたけど、それでも雰囲気は優しいままだった。そうして、セフィロスは俺の額にキスをする。

そのキスを受けながら、俺はちょっと目を閉じた。

俺はやっぱり今もまだ子供と言われる人間なんだろうけど―――――――それでも良いのかもしれない、そのキスを受けながら不思議と俺はそんなことを考える。

その言葉が耳障りだったのはきっと、俺がそれに拘っていたから。

今この瞬間、俺はそんなことに拘っていなかった。単純だけど、それよりもセフィロスのキスの方が嬉しかった。そのくらい、優しい雰囲気だったんだ。

年齢差という距離は一生縮まらなくて、俺はセフィロスにとって一生子供だけど。

それでも俺とセフィロスは恋人関係で、心の距離はどんどん縮まっていくから。

「俺は子供かな?」

俺は目を開けて、ふとそんなことを自分から聞いてみた。

するとセフィロスは、ちゃんと分かるように笑ってこう答える。

「そうだな――――――でもその前に…お前は、俺のクラウドだろう?」

何だかその言葉を聞いて、俺はとても安心していた。今までのことが嘘みたいだ。けれど今みたいに思えなかったのは答えが見つからなかったからなんだ。

それを今日、セフィロスは教えてくれた。

それは勿論、完璧な答えではなかったかもしれないけれど、それでも俺には十分な答えだったような気がする。

「…ラムレーズンアイス、食べようよ」

ちょっとしてから俺はそう言って笑った。

セフィロスはいかにも嫌そうな顔をして、またか、なんて言いながらもアイスを一緒に食べてくれた。

さっきと違ってぶつぶつ文句を言いながら食べているセフィロスを見ながら、俺は不謹慎にもちょっと可愛いなあと思ったりする。

“好き嫌いなんかしてるほうが余程子供じゃないか”って思うけど、そういうふうに思えること自体が多分、距離を縮めることなんだろう。

だから俺は口に出して、

「セフィロスだって子供と同じだよ」

そう言ってやった。

「そうかもな」

そう答えながらもセフィロスはアイスに苦戦している。

俺は隣で同じようにラムレーズンアイスを食べていたけど、それはさっきと違って少し大人の味がした。

それは、ほんのり甘いラムの味。

子供と大人が同居してる、そんな味のような気がした。

 

END

 

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