言霊(1)【セフィクラ】

セフィクラ

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■SWEET●SHORT
セフィロスの気持ちを聞きたいクラウド君の話。

言霊:セフィロス×クラウド

 

『言霊って知ってる?』

いつか誰かにそんな事を聞かれた。
言葉には魂がある、そういう内容だった。

言葉にすればそれは真実になるんだって、その誰かは言ってたっけ?
別に言葉なんか無くったって良いのにって思ってたけど。
でも…。

今なら、少しそれも分かる気がする。

 

 

 

「お前、帰らなかったのか」

リフレッシュ休暇とやらで、ガランと静まってる訓練生の兵舎。

残ってるのは、俺と、あと数人。

見回りとか言って兵舎に来てたせセフィロスは、俺を見つけてそんなふうに言う。

「だってセフィロスと会えないし。大体、俺は帰る資格無いよ」

俺は本当に思ってることを口にしただけだったけど、セフィロスは何だか不機嫌そうな顔になった。

そんなにマズイ事、言ったかな?

「休暇中とはいえ、お前は残ってるんだから自覚を持て」

「自覚って?」

「残っているなら話は別だ。個人訓練に励むんだな」

「ゔ…」

相変わらず痛いトコ突いてくるんだよなあ。でも仕方無い。だってセフィロスはソルジャーだし、会社で言えば普通に上司だし、言う事聞かないと。

でもセフィロスは嬉しくないのかなって疑問になる。

だって折角こんなふうに堂々と会えるのに。というか、普段から堂々とは会ってるけど、やっぱり二人きりとは違う。

休暇期間なら兵舎には殆ど人なんかいないし、俺は嬉しかったんだけどな。

俺はそんなふうに思いながらも、はい、なんて正直に返事をした。

「セフィロス、もう帰るんだ?」

用件は済んだといわんばかりに背中を向けるセフィロスに、俺は慌ててそんな事を言う。

本当にただの見回りなのか、セフィロスは「他に何かあったか」なんて答えてきた。

どうせ俺なんか眼中に無いんだろうな。

でも、引き止めてどうしようって訳でもなくて、俺は言葉を失う。

こういう時、何て言えば良いんだろう?

もっと一緒にいようよ、なんて口が裂けても言えないし…。
だってどうせ…。

「今は“任務”中だ」

「…だよね」

やっぱそう来ると思った。

俺はちょっと悲しくなったけど、それを気付かれないように、じゃあ、と物分りの良い言葉をかけた。そして、やっぱりセフィロスはお決まり文句を言った。

「ああ。くれぐれも訓練は怠るな」

はい、分かってます。

 

 

 

トレーニングルームで一人、汗を流してるのも何だか変な感じだった。それでも暇よりかは何倍か良かったから、俺は黙々とトレーニングしてやった。

日頃の訓練と同じ時間だけトレーニングするっていうのも、かなり体力を使う。でも結局はそれをこなして、慣れた自分の部屋に向かった。

戻っても誰もいないし、何だかんだ言って休暇期間って退屈かもしれない。だって俺は帰ろうとは思わないし。

俺は適当に飲料水だけ仕入れた。それから部屋に向かうと…どういう訳か、そのドアの前にはセフィロスがいた。

どうしたんだろう?

「終わったのか」

立ち止まってる俺に気付いて、セフィロスはそう声をかけてきた。

「うん。ちゃんとトレーニングしてきたよ」

約束は守ったよ、セフィロス。
俺は心の中でそう付け加える。

「“任務”は終わったの?」

「ああ」

「お疲れ様です」

「……」

一応、いつも通りのやりとりの手順を踏んだっていうのに、セフィロスはどうもまた不機嫌そうな顔になった。

また変な事言ったかな、俺?

困惑してると、セフィロスはふいに「入らないのか」と視線でドアを指した。

「あ、うん。入る。…えっと、セフィロスは?」

何だか誘ってるみたいで嫌な台詞だったけど、本当にそうなんだから仕方無い。いつも二人で会う時は、必ずセフィロスのトコだから、何だか変な感じかも。

「悪くない」

セフィロスは俺に問いにそんな曖昧な言葉を返した。

悪くない、って…本当はどう思ってんだろう?
でも此処にいたって事は―――なんて、期待するだけ馬鹿かもしれない。

「じゃあ」

俺はドアを開けて、セフィロスを招き入れた。

 

 

 

訓練生に与えられた部屋は、そう広くもない。というか、はっきり言って狭い、かな。

しかもこの日なんて最悪だった。何がって、正に部屋の中は無法地帯状態だったから。

「お前、少しは片付けろ」

ちょっと呆れたふうに言われて、ごめん、と取り敢えずは返しておく。

男だったら結構「普通」で済みそうなもんだけど、相手が悪かった。何せセフィロスは結構、身の回りは綺麗な方だしね。っていうかそれって、もしかして専属で誰かが片付けてたりして…。

「狭苦しいな」

ごく普通に、隅のベットに腰掛けたセフィロスは、部屋の中を視線だけで見回してる。こういう時、別に見られちゃヤバイものは無いのに、どういう訳か焦る。

「いつも此処で生活してるんだな」

「あ、うん。最初は寂しかったけど、今じゃもう慣れたよ」

「ふうん?」

初めて此処に来た時は、狭くて寒くて、それに独りきりだったから、思わずホームシックな気分にもなったりしたけど、今じゃある意味、快適って言えるかもしれない。

俺は買ってきた飲料水を取り合えず置いて、適当に腰を下ろす。

「普段、何をしてる?」

「へ?…何、って…。訓練の事、考えたりとか…」

「“とか”?」

うっ。

何でそういう所を突っ込むんだろう、この人は。

俺が普段考えてる事なんて、訓練の事か、あとは…。
この人の事、か…。

チラリとセフィロスを見てみると、珍しく笑ったりなんかしてる。何か嫌な感じだなあ。どうせ分かってて聞いてるんだもんな。

「自分で処理したり?」

可笑しそうにそんな事まで聞いてくるんだから、本当に困る。

「そりゃ…あるけど」

とりあえず答えておいたけど、何だか次の質問が見えてきて俺は一人で焦った。しかも正に的中って感じだ。

「何を考えながら?」

こういう時、セフィロスは本当に意地悪だと思う。だって、本当に分かってて聞いてるんだから。

俺の答えを聞いて、だからどうって訳でも無いんだろうけど…ある意味イジメだよ、本当。俺はちょっとイジけ気味にボソリと答えた。

「…セフィロスの事、とか…」

「―――ふうん?」

俺を見ながら、口の端はやっぱり上がってる。

やっぱ言わなきゃ良かった…そう後悔しながらも、その視線が随分と執拗で、俺は妙な気分になる。

何だろう…。

だけど良く考えたら、このシチュエーションって答えは一つじゃないのかな。

だって、特に用も無いのに夜中に二人きりで。本当のところ、俺は休暇期間を楽しみにしてたけど、その理由はコレだった訳だし。

でも何でか、凄く照れる。

いつもはこれ程、緊張なんかしないのにな。

大体いつもと違いすぎるんだ。いつも俺が独りで考えてる場所に、今はセフィロスが…本人がいたりなんかして。

何か凄く、変な感じだ。

「クラウド。…どうしたい?」

いきなり髪を撫でられて、思わずビクッとしてしまう。

どうしたいか、セフィロスが俺に聞くのはいつもの事だ。

毎回思うけど、コレってやっぱり意地悪だよ。そういう雰囲気に持っていくのはセフィロスなのに、いつも肝心な事は言わない。

結局最後に言うのは俺ばっかりなんだ。分が悪いよ。

でもやっぱり今日も、俺が決定打、なんだ。

「……しよう、よ」

 

 

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