MORE SWEET【ザックラ】

ザックラ

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■SWEET●SHORT

一緒にケーキを食べよう♪ラブラブですvv

MORE SWEET:ザックス×クラウド

 

「よっす!ケーキ買ってきたぞ、ケーキ!」

「はあ、ケーキぃ?」

素っ頓狂な声を出したクラウドに、ザックスはナハハ、と笑った。

何が何だか分からないふうに首を傾げるクラウドにザックスは、

「だってお前、誕生日だろ?」

と当然のように言う。

そこまで言われて、クラウドはやっと今日が自分の誕生日だということを思い出した。

そういえばザックスとそんな話をしたかもしれない。でもまさかザックスが覚えているなんて思ってもみなかった。

何せその話をしたのは随分と前で、ここ最近の会話ではなかったのだから。

「な、入っても良いか?」

「え~、靴脱いでよ?」

「へいへい」

そう適当に返事をしながらザックスは窓枠をひょい、と飛び越えた。

実はザックスは度々こんなふうに窓越しにクラウドの部屋を訪ねていた。

丁度窓側が外を向いているので、本当に都合が良い。ちょっとした伝言もできるし、窓を開ければすぐに…まあ、いろいろできる訳である。

トン、と部屋に上がりこんだザックスに、クラウドは「あーッ!!」と叫ぶ。

「靴脱げって言っただろっ!」

「分かった分かったって。今脱ぎますって」

そんな調子で靴を脱ぎ始めるザックスの隣で、クラウドが几帳面に正座なんかをしてその様子を眺めている。しっかりと靴を脱いだザックスは、脱いだ靴をちゃんと揃えて隅の方に置いた。

そんなザックスの隣には小さな白い箱がちょこんと置いてあり、それは確かにケーキのようである。

それをチラリと見ながら、本当に買ってきてくれたのか、とクラウドは内心ちょっと嬉しくなった。

そういう何気ない優しさは、ザックスならではだと思う。細かいことにはこだわりそうも無いというのに、何気に結構気遣ってくれたりする。

「良く覚えてたね」

そんなふうにクラウドが言うと、ザックスは「当たり前だろ」と得意げな顔になった。

「俺はそういう事はちゃんと覚えてるの!」

「って、それどっかの女の子のことも覚えてるんでしょ?」

怪しげな目つきでそう言うクラウドに、そりゃ勿論、などとこれまた得意げに言ってからザックスは、はっ、とした。

気付いた時には、クラウドが嫌ぁな視線を投げかけていたのは言うまでもない。

「ふう~ん、へ~え、そうなんだあ…ふう~ん……」

「ば、ばっか!んなワケねえよ!俺はお前の誕生日だからだなあ、こうやって…」

「女の子との約束をキャンセルしてきた、と…」

「そうなんだよ…これまたうるさくて困って……って、違っ!!」

「も~良いよ!ザックスなんて知らないっ!」

「あう~っ、クラウドぉ~っ!!」

ふい、と顔を背けるクラウドに、ザックスは泣く泣く手を合わせた。もうこれもお決まりパターンなのは言うまでも無い。

こんなことはしょっちゅうで、その度にクラウドはモヤモヤしたものだけれど、何せ相手は女の子である。

女の子相手にオトコの自分がヤキモチなんてやいてどーする!、と思うけれど、そう思ってしまうものは仕方無い。

しかし実際にザックスが女の子と遊ぶのは友達としてだということをクラウドは分かっていた。だからザックスは女の子と特別な関係にはなったりしない。本当にサッパリしている。

一番ドロドロしてるのは、実はクラウド自身だったかもしれない。

「ほら、機嫌直せって!」

そう言って肩に手を乗せてくるザックスに、クラウドはぶすっとしたままの顔で振り返る。

「じゃ、約束!」

「約束?」

きょとんとするザックスに、クラウドはズイッと寄って、こう言う。

「“好きなのはクラウド君だけです”、はい、復唱っ!」

「“好きなのはクラウド君だけです”…」

「よろしいっ!」

「…っていうか…」

ぽかんと口を開けたままだったザックスは、ふとガッツリとクラウドに抱きついて、ぎゅう、とその体を抱きしめた。

「お前って本っ当、可愛いなあ」

「ばっ…!可愛いとか言うなよっ!」

真っ赤になってそう抗議するクラウドだったが、威圧感なんて微塵も無い。それも当然である。

とにかく、ザックスはそんなクラウドが可愛くて仕方なかった。オトコなのは十分分かってることだし、そこら辺を履き違えてるわけでは勿論、無い。

ただ、こういうちょっとしたリアクションだとかが妙にツボにはまる。だからザックスは、たまに意地悪でわざとヤキモチをやかせてみたりした。これぞ密かなる楽しみ…。

ひとまずクラウドの体から手を離すと、ザックスはパチンと手を叩く。

折角買ってきたケーキがあるのだから、やっぱりそれを食べるべきだろう。

「クラウド、お前、何のケーキが良い?」

「ってか、何があんの?」

白い箱を開けてその中を覗き込むと、ザックスは「ええと…」などと言いながらケーキの名前を言い連ねた。

「まずー、イチゴショートだろ。それから、ベイクドチーズケーキ。で、モンブラン。あとはレモンケーキとクラシックチョコケーキとレアチーズ…」

「ちょっと待ったあっ!!」

いきなり待ったをかけたクラウドに、何だよ、とザックスは不思議そうな顔をする。隣では焦った顔のクラウドがいた。

「ザックス…一体、何個ケーキ買ってきたの?」

恐る恐るそう聞くと、あっさりと返事が返ってきた。

「八個」

「八個ぉぉ~ッ!!?」

それ多すぎない!?、とすかさず突っ込みを入れるクラウドに、相手はそうかな、などと首を傾げる。

それにしても小さな箱にそんなにケーキが入っているとはとても思えなかった。しかしその理由は、ザックスの口からするっと説明される。

ザックスはやっぱり得意げだった。

「甘いな、クラウド。これはな、ここらじゃちょっと有名なケーキ屋で買ったのよ。有閑マダムご用達の店だぜ?で、ケーキはちびっこいんだよ。だから、八個。OK?」

「いや、OK…って…」

確かに箱の中を覗いてみると、そこには上品そうな可愛いケーキがちまちまと並んでいた。いかにも高級そうである。

そんなに高級そうなケーキなんか買ってこなくて良いのに、と思ったけれど、それはザックスの好意だから何も言えない。

とにかく、分かったよ、と納得し、さっきの続きが再開された。勿論ケーキ選びである。

「で、何が良いのよ、お前?」

「ええと…」

ザックスの隣で白いケーキの箱を覗き込んで、クラウドは、う~ん、と唸る。どれもそれぞれ美味しそうだし、どれも嫌いじゃない。

取り合えずは無難なところで、クラウドはショートケーキを選んだ。

「じゃ、俺ショートケーキ」

「えっ!」

その瞬間にザックスの顔が固まった。

クラウドは焦って、

「え、え、俺、別のでも良いよっ?」

と言ってみたけれど、ザックスは哀愁を漂わせながら、ふっと笑った。

「いや、良いんだ、クラウド…。だって今日はお前の誕生日じゃないか…なあ?」

「う、うん…まあ」

何だか妙にザックスがシブく見えるのは気のせいだろうか。

とにかくザックスはさも切なげな手つきでそのショートケーキを箱から取り出すと、クラウドにちょこんと手渡した。

それは本当に手乗りサイズである。可愛いけれど、可愛いにも程がある。

食べた気になるんだろうかとクラウドは首を傾げた。ここら辺の有閑マダムってお上品なんだなあ、などとどうでもいい事に思わず感心してしまう。

「じゃ、いただきます」

そう言ってケーキを口に運ぼうとするクラウドを、ザックスはじっと見つめていた。それに気付いたクラウドは、口に入れる寸前でそれをストップする。

そして、もう一度確認の為に聞いてみた。

「…あの…ザックス。俺、他のでも良いんだよ?本当に」

「ふっ…バカだな、クラウド。誕生日の主役はお前だぜ?お前が選ぶものに俺様が拒否なんかできるわけないだろ…?」

「…っていうか、どう見ても目が切な気なんですけど…」

何の何のと言うザックスを疑わしげな目つきで見ながら、クラウドはあーん、と口にそのケーキを放り込もうとする。しかしその瞬間になると、ザックスはやっぱり口をぽかんと開けていた。

そんな訳で、それが気になってどうしても今一歩ならぬ、今一口が踏み出せないクラウドは、仕方なくそのケーキをザックスに渡すと、

「食べなよ」

と言う。

別にクラウドは本当に何でも良かったのだ。単に適当に言ったのがショートケーキなだけであって、特別思い入れがあるわけでも何でもない。

しかしそうやって切り返すとやはりザックスは強情だった。また「誕生日だから」とか何とか言い出して遠慮の姿勢を見せる。

とはいってももう何だかショートケーキは食べてはいけない気になっていたから、クラウドは別のを選ぶよ、とサックリ言った。

「え、でもお前…」

「良いって!ザックス、食べなよ」

そう言って笑うクラウドの邪気は無い。それを見てホロリとしたザックスは、本当に小さいそのショートケーキを見つめて、何を思ったかクラウドにこう言った。

「クラウド、ちょっと口開けろ」

「はあ?」

「良いから」

「?」

何だか分からないままに口を開けてみると、ザックスは即座にその口の中にショートケーキを突っ込んだ。

「#$%&*~!!!」

解読不明な宇宙語を発するクラウドに、ザックスはにんまり笑ってから顔を近づける。それから半分口の外に出ているケーキをパクリ、と自分の口に放り込んだ。

「ん~美味いっ」

そう言って口をもごもごさせるザックスを見ながら、クラウドも口の中のケーキを消化させようともごもごする。そうしながら抗議すべくザックスを睨む。

「あのねえ!ザック…」

しかしその時、今度はしっかりとザックスの唇で口が塞がれた。

咄嗟に体を捉えられ、クラウドは背後へと倒れ込む。

ドサリ、と体が床にくっ付いた。

「んっ、んんっ…!」

まだ甘い口の中は、ケーキとザックスの舌が混ざり合ってぐちゃぐちゃの状態だった。

とにかく甘い。

その中でクラウドの舌を巧みに絡め取るザックスに、クラウドは抵抗など全くしなかった。

甘さがいっぱいで、それでもキスしているなんて何だか不思議な感じがする。何となく手をザックスの背中に回すと、ギュッとその服を握ってみた。

自分の上にいるザックスの重みを感じながら、今日はもしかしてこのまま……なんて良からぬことまで考えてしまったり…。

いけない、いけない!―――そう思ってクラウドはブンブン、と頭を振る。

と、その瞬間。

反動で唇が離れた。

「あ」

しまった、と思ってクラウドはザックスを見てみたが、別に怒ってるわけでも何でもないようだ。もしかしたら雰囲気を壊してしまったかな、と一瞬心配だったが、そうでもないらしい。

ザックスはにんまりと笑いながら、

「ごちそーさん」

と言った。

「な、何が…っ」

それはキスのことだったが、クラウドはどっちかというと自分の更なるイケナイ妄想の方にカアッと顔を赤らめた。

その変化にザックスは、「お」という顔をする。

「クラウドぉ~、今、変なこと考えてたろ」

「なっ!何言ってんだよ!そんな事あるわけないだろっ」

「またまたぁ!や~らしいっ」

「バカやろおっ!!!」

そんなふうに必死になるクラウドを見ながら、ザックスは大笑いしてしまった。

これだから止められない、と思う。

きっと俺も重症だなあと思うザックスであった。

 

 

END

 

 

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