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高級な剣のレプリカを欲しがるザク。なんとかしたいクラだけど…?
ショウウィンドウ:ザックス×クラウド
「やっぱ良いよなあ、これ」
ミッドガルにある骨董品屋のショウウィンドウに並べられた剣のレプリカ。
それを見ながらザックスはそんなふうに呟く。
今、ザックスが目にしているのは業物の剣でレプリカで、ちょこんと立てかけられたプライスカードには5、000、000ギルと書かれている。
「こんなののどこが良いの?だってレプリカでしょ?」
使えないものなのにそんなに良いんだろうか?
ザックスの隣で同じようにそれを眺めていたクラウドは、疑問に思ったそれを素直に口に出す。するとザックスは、照れたように笑いながらこう言った。
「いや、使えなくて良いんだ。単にロマンなんだよ、こういうのは。飾って、見て、そんだけで満足なんだよ」
「へえ…」
何だか良く分からないけど、ザックスにとっては相当嬉しいものなんだろうなあ。
クラウドはそんなふうに解決をしつつ、ショウウィンドウに並べられた別の品物に目を移す。
その間もザックスは、じいっとそのレプリカを見つめて嬉しそうにしていた。
そんなザックスを見て過ごしていたクラウドは、いつしか、どうにかしてそれを手に入れられないものだろうかと考えるようになったものである。
もしそれを自分が手に入れたら…そしてザックスにプレゼントできたなら…そうしたら、きっとザックスは喜んでくれるだろう。
しかし、そうはいっても5、000、000ギルの代物である。簡単に手に入るはずもない。
「どうにかならないかなあ」
クラウドは来る日も来る日もそう考えたが、やはりその解決策は分かりそうにもなかった。そもそもそれほどの大金を手に入れる手段などない。貯金箱を覗いてみても、そこにはナケナシの10、000ギルがあるくらいだ。
どうにかしたい。
でも、できない。
その葛藤は長らくクラウドを苦しめたものだが、その苦悩にもどうやら終焉というのは存在しているらしかった。
というのも、とうとうあのレプリカが売れてしまったのである。
それはある日のこと。
二人で出かけ、いつものようにその店のショウウィンドウに差し掛かると、ザックスの表情がちょっとだけ寂しそうに変化した。
そう、あのレプリカが無い。
とうとう売れてしまったのだ。
5、000、000ギルもする業物レプリカだから、きっとどこかのお金に困っていない人が購入したのだろう。
彼らはもしかすると、それほどの思い入れも無く、数ある飾り物の一つとしてそれを購入したのかもしれない。もしそうだとすると、何だかとても悔しいけれど…でも真実は分からないし、売れてなくなってしまったものはどうしようも無い。
「はは、売れちゃったな」
「うん…そうだね」
「あ~あ、欲しかったなあ」
ザックスは笑ってそう言うと、ま、仕方ないよな、と続けて、クラウドの手をギュッと握り締めた。
いつもだったら絶対そんなことをしないのに、一体どうしたのだろう。
そう思ったクラウドが隣を見上げると、そこには至極満足そうなザックスの表情があった。
さっきまで悲しそうな顔をしてたのに。
それなのにどうしてそんなふうに幸せそうな表情を浮かべられるのだろうか?
そんなふうに疑問に思っていたクラウドの前で、ザックスはすっきりと快晴の空のように笑った。
「ちょっと寂しいけど…でも良かった!」
「え?」
「それにさ、ありがとな」
「ええ???」
クラウドは、突然お礼を言われるなんてどういうことなんだろうかと首を傾げる。さっぱりと意味が分からない。しかしザックスは、ただただ満足そうに笑うだけだった。
あの骨董品屋のショウウィンドウにディスプレイされたレプリカは、ザックスが大好きだった業物のレプリカ。飾って、見て、それだけで満足なレプリカ。
それをどうにか手に入れられないものかと思っていたクラウドは、いつしかザックスと同じようにショウウィンドウにへばり付く日々を送っていたものである。
だからあのレプリカは、いつしかクラウドにとっても大切なレプリカになっていたのだ。
偽者レプリカは、二人に本物の幸せなひとときを運んだのだった。
END