禁忌の先へ【アンジェネ】

アンジェネ

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■SERIOUS●SHORT

セフィロスと三角関係のようなお話。甘くはないけど恋愛主軸です!

禁忌の先へ:アンジール×ジェネシス

 

手を伸ばして。

禁忌に触れたら。

その先は―――――どうなるんだろうか。

 

 

 

幼なじみのよしみだとか、もうそういうレベルをゆうに越えている。そう思った。

それでも彼が望むならその通りにしようと思った。それが自分にできることだから、と。

――――身代わりでも良い。

それこそ最初はそう思っていた。

例え自分が誰かの身代わりでも、実際に触れるその相手は本物だし自分が思い描いた通りのものである。

長らくそう思ってやってきたのだが、ある段になって急にそうできなくなった。

「今までのことは、忘れてほしい」

「何で?」

「不要になったからだ」

「不要・・・」

すぐにわかった。

要するに、身代わりは不要になった―――――本物を手に入れたから。

そういう事だ。

 

本物とは――――セフィロス。

 

 

 

前々から知っていた。ジェネシスがセフィロスを想っていることは。

それはあのバノーラ村にいる頃から変わっていなくて、神羅に入った事で助長されたのである。

しかし、神羅に入ってもなかなかセフィロスと親しくすることは困難だった。

己のテリトリーに他者を踏み入れさせないその態度が、同じファーストになってもなかなか近づけなかった理由。

あまりに近くにいるのに、あまりに近付けないもどかしさは地獄のようだ。

ジェネシスがなぜそこで自分を指定したのかはわからない。わからないが、ジェネシスはもどかしさから逃れるための相手としてアンジールを選んだ。

幼なじみだから、確かに気心は知れている。

ジェネシスの気持ちも知っている。

しかし、そういうふうに触れてしまうのは禁忌だった。

ジェネシスの誘いをうけ、それに了承してしまった瞬間から―――――アンジールはセフィロスという怪物を敵とすることになったのである。それはあまりに分が悪い。知っていたはずだけれど。

しかしそういうふうに関係が変わってからも、心のどこかでは、終わりが来ないように思っていたのだろう。

いつかジェネシスが離れていくだとか、そういう不安を感じたことはなかった。

それはもしかすると、セフィロスが落ちるはずはないと、心のどこかで思っていた証拠かもしれない。

しかし、どうやらそれは崩れ去った。

セフィロスはジェネシスの想いに応答したのだ。それがどんなやり方だったとしても。

やめておけ、と言った。

アンジールがジェネシスにそう言ったことは、個人的感情からの言葉でもあったがそれと同時に忠告でもあった。

セフィロスに憧れる心理は誰しも同じだし、時折ジェネシスのように本気でその人を手に入れようとする人間もいる。

しかし、たとい手に入れたとしても、それは喜びと同時に絶望をもたらすものなのだ。

何故絶望するか?

そんなのは決まっている、思い通りになど絶対にならない恋愛だからだ。

何だそんなことくらいと思うかもしれないが、しかしこれの究極の形は、ただつき従うだけの生ける人形である。

そんなものになりたいのか、お前は?

そうジェネシスに忠告してきたつもりだったのに、そんなものになるより自分と共にいた方が幸せなのだと教えたかったのに、やはりそれは無理だったのだ。

 

 

 

手を伸ばして。

禁忌に触れたら。

その先は―――――どうなるんだろうか。

 

―――――決まっている。

禁忌の先には絶望が眠っているのだ。

 

 

 

“本物”を手にいれたジェネシスは、それから数カ月して見るからにオカしくなった。

かつてのように綺麗に笑わなくなったし、いつもどこか疲れているふうだった。

少し痩せたか?と思ったのは、もしかしたらヤツレタの間違いだったかもしれない。

「セフィロスとはうまくいっているのか」

「ああ、大丈夫だ」

いつもこの会話の繰り返し。

その表情を見れば、そんなはずはないとすぐに分かる。

どういう状況を「うまくいっている」と称するのか、それは人によって違うかもしれないが、少なくともアンジールにとってそれは尋常な状況とは見えなかった。

「お前は今、幸せか」

「ああ、幸せだ」

「そうか、なら良かった。でもジェネシス、今の幸せは、昔お前が願っていたとおりの幸せなのか」

「……」

ジェネシスは答えなかった。

答えない代わりに、こう一言口にした。

「夢は、捨てたさ」

ああ、ほら―――――。

禁忌に触れたから、もう夢は見られない。望みは絶たれた。

それが絶望するということだ。

かつてのジェネシスの中には希望があった。セフィロスという人間に希望を見ていたのだ。

しかしそれはもう、無い。

ジェネシスのその言葉を受けて、アンジールは笑いもせずに答える。

「俺は、夢は捨てられない。今も生きている。――いや、むしろ今、夢が増えたくらいだ。知っているか、ジェネシス。到底叶いそうにない事であっても、夢を見ることは許される。現実にならなくともな」

それは、ジェネシスが長らくセフィロスに対して抱いていた希望のように、叶いそうにないと思うものでも許されるものなのである。

だってそれは目標ではなく夢、だ。

そして夢には壁がない。

いつまでもどこまでも広がっていける。

「ジェネシス。俺は、俺の夢を叶えたい。”お前が夢を叶えた”ように」

そう―――――それが禁忌だとしても。

叶いそうにない夢だとしても。

 

 

 

禁忌の先には、絶望が眠っている。

だからこの夢の先には絶望が眠っているのだろう。

それは分かっている。

 

それでも、その覚悟をしたのだ、自分は。

あの時からあの英雄は敵になったのだ。

だから―――――。

 

その禁忌の先へ、行く。

 

「俺は、あいつを消しにいく」

 

 

END

 

 

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