ムービーショウ。(9)【ルドレノ】

ルドレノ

 

ぐい、とレノの胸倉を掴む。

その勢いで持ち上がった体をそのままに、押し付けるように唇を奪う。

レノの薄めの唇は、確かに生暖かかった。

普通だったらここで目を見開くなり何なりというアクションがあっておかしくないのだが、当然その時のレノは普通ではなく、その目は先ほどと同じように空ろげである。体もだらんとして重い。

がしかし、ふいにその腕が力強くルードの胸をドン、と殴った。

「っ…!」

何て力だ。朦朧としてるくせに。

そう思ってルードは思わず顔を顰めたが、すぐにレノの体をベットに引き釣り上げると、それをそのままシーツの上にグイ、と押し付けた。

レノの体は抵抗なく横たわり、相変わらず空ろなままの目が天井をさ迷っている。

「はは…はは」

「バカか、お前は」

空ろに笑うその顔にそう投げつけると、ルードはレノの髪をグイと掴んだ。すると、それに反応するようにレノの足がガン、とルードのわき腹を蹴り上げる。

それが災いして、よろめいた体がそのままレノの体に覆いかぶさった。

重なった部分がじんわりとする。

妙な焦燥感。ざわりとする心。

レノの髪を掴んでいたルードの手から力が抜け、髪をすり抜けて頭部から頬にかけてを強く包みこむ。もう一方の腕は、まるで囲うようにレノの脇をガードした。

不思議な感覚だと思う。

いくら仲の良い相棒とはいえ、こんなに間近で見ることなどなかった。

こんなに密着することなどなかった。

それはまるで境界線のように、当然のように決められていた“間隔”だったのに、今はその間隔を越えている。境界線を越えようとしている。

「レノ…」

もがくこともないその体を自由にしてしまうことは、実に簡単なことだった。

シャツを取り去ることも、ズボンのジップを下げることも、実に簡単。

一度そうしてしまえばその後のことも簡単で、躊躇いなどは一気に吹き飛んだ。何せ抵抗されることもなければ否定されることもない。かりてきた猫のように大人しい。

しかし、大人しいながらもその態度は誘惑に満ち溢れていた。

無論それは意識的なことではなく、飛んだ意識の中でのものであるが、にゅっと伸びてきた手が上手い具合にルードを引き寄せる。

本能の為だろうか、セックスという快楽を受け入れようとしているのだろう。

思えば、レノの脳内もこの行為も、快楽という部分では共通している。陶酔とか悦楽とか、それらは全て脳を麻痺させる。セックスもそれと同様、脳を麻痺させる。

そう―――――麻痺していなければ、こんな事できるはずがない。

そうに違いない。

「は…あっ…あぁ…」

聞き慣れたはずの声が、聞き慣れない息遣いをする。あまりに奇妙で仕方が無い。しかしそれ以上に、自分自身が奇妙で仕方が無いとルードは思っていた。

細身の体が健康的な色の肌を露にしている。

服を取り払ったせいで全裸になっていたレノは完全無防備で、その呼吸すら腹部の揺れで分かるほどだった。

もしかしたら自分は気が狂れてしまったのじゃないか。

そう思いながらも、ルードは夢中でレノの体を侵食した。

女のようにふくよかな乳房もなく、滑らかな腰のラインもない。むしろ骨ぼったい皮の薄い肉体だったが、愛撫すればするだけ返ってくる反応にゾクリとする。

思わず、優しさとかどうとかそんなものを忘れ、ともかく舐め回し、吸い尽くした。

感じているのか、下半身が疼き出す。

隠すこともないまま勃起し始めたレノの性器にむしゃぶりつくと、衣類の中で収まっていたはずのそこが破裂しそうに膨らんだ。

こんなに興奮したのはいつ振りだろうか。ベットの中ではそれほど性急に興奮するタチでもないのに、どうやら今日は既に抑えることすら難しいと分かる。

全ての服を脱ぎ去ったルードは、そのまま雪崩込むようにしてレノの上に重なった。初めて触れた肌と肌とが、熱い。

「レノ…」

押さえ切れない。

押さえ切れなかった。

がっしりとしたその体でレノを組み敷いたルードは、激しく舌を絡め取るようにキスをすると、それと同時にレノの充血した性器を素早く扱き出した。

途端に激しくなった喘ぎ声が耳のすぐ傍で響き、ますます体が興奮してしまう。

すると、意識があるのだか無いのだか、レノの手がぐいとルードの後頭部を掴んだ。それは抵抗ではなく、要求のサインである。

それが証拠に、レノの舌が自ら激しく絡んでくる。更に驚いたことには、もう一方の手がルードの性器を扱き始めた。

どうしようもない快感が走り、いてもたってもいられなくなる。

それは、甘い雰囲気とかまったりした雰囲気とか、そういったものとは無縁のセックスに違いなかった。どちらかといえば性欲が先走りしたようなセックスだったろう。お互いが快感を得たくて、お互いを興奮させる。正にそれに近い。

しかしそれ故に、衝動的で突発的だった。

そしてその衝動の中に、それでも感情がないわけではなかった。

征服欲、とでも言うのだろうか。

無理矢理すべてを奪い自分を満たそうとする、それに似ている。

「はっ、はっ、は…ぁあっ…!」

「イけ、レノ」

「うっ…んっ、あぁ…あ…っ――――!」

扱く手の中で、レノの勃起したモノが一際硬くなるのが分かった。

達すると分かって更に動きを弾ませると、予想通りソコはすぐに絶頂に達し、ドクンドクンと収縮をし始める。ルードの腹部に派手にかかった白い精液が、ドロリと白いシーツに流れ落ちた。

達したことで気が抜けたらしいレノの手が、ルードの性器からふっと外れる。

ルードはその手を正位置に戻してやると、己の腹部にかかった液体を指の腹でぬるりと掬った。そうして、液でぬめり光る指をレノの股間にグイと押しやる。

狭いソコは、指を挿れるのすら窮屈だった。

ぬめりで多少の侵入を許すものの、どうやら奥までは許してはくれないらしい。それでも強引に押し入れると、レノが短い声を上げた。痛いのだろう。だけれど止めるつもりはない。

ごろんとレノの体をうつ伏せにしてベットに押し付けたルードは、背後からもう一度そこを攻めた。

きつくて途中で引っかかるそこを強引に押し入れると、一度引き抜いて、も一度強く押し込む。そうして何度も強引に指での律動を続けると、ソコはやがて観念したようにルードの指を受け入れた。

レノのキツそうな息遣いが絶え間なく続く。

しかしそれも既に興奮剤でしかなかった。

止められるはずなどない。

「ん…っ!うぅ…っ!!」

指で広げたそこに、到底挿れることなど不可能そうな、勃起しきったモノを突き立てる。当然のように入口でストップをくらい、まるで入る余地がない。

部屋をぐるりと見回すと、身だしなみに気を使っているレノならではと言うべきか、それらしいものが幾つか並べられているコーナーがあった。

ルードは適当な潤滑剤を手に入れようと手身近に物色したが、そこで上手い具合に最適なものを目にすることとなる。

それは、引き出しの中にざっくばらんに転がっていたコンドームと挿入潤滑剤。正に最適だった。

油のようにぬるぬるとした感触が、やけに嫌らしい。

それをべったりと塗りこむと、もう一度レノの中に突き入れる。キツイ事には変わりはないが、それでもさっきよりは大分マトモだろう。

レノの呻き声は相変わらずだったが、徐々に侵入した性器がキツク締められて何ともいえない感覚に陥る。

「あっあ、あぁ、あ…はっ…あ!」

顔は、見えなかった。

すらりとした背中と、突き出た尻だけが目に入る。

細身の腰を大きな手で抑えながらとにかくひたすら律動を続けると、シーツは大きく波打ち、パン、パン、と局部の擦れる音が卑猥に響き渡った。

「っ…レ、ノ…!」

「はっ…ぁあ、あ…ぁっ…!」

欲の赴くまま、ひたすらに突き続ける。キツク締まるソコから、いいようのない快感の流動を覚える。

額を、つうと汗が伝った。抑えた腰にもじっとりと汗が浮かんでおり、手のひらがじっとりとしている。

快感に歪ませた顔の中、細めた目の中から世界が見えた。

その世界の中にあったのは、薄暗い部屋と、相棒であるレノを犯す自分の姿である。

確かに局部は繋がっていた。それが、見えた。ぬめる液体で光る性器が、レノの中に入り込んでいる。

「ぐ…っ!」

やがてその世界が終わるとき、ルードはレノの奥深くに先端を留め、局部をぴったりと密着させたまま体内に射精した。

暫くは恍惚としてその密着から離れられなかったが、ようやく落ち着いて体を離してみると、いつの間にかシーツにも白濁液がどろりとこびりついていたものである。どうやらレノもイったらしい。

ぐったりとして目を瞑る相棒の顔を見て、ルードはそのこめかみにキスをする。

そして、汚れきったシーツの上で、その体をぎゅっと抱きしめた。

 

 

 

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