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■SWEET●SHORT
通じ合っていても言葉には出さないもどかしさ。
しかし最高の関係かも?
いつか:セフィロス×ザックス
いつか本当の話ができるかな。
今までずっと、黙ってきた。
本心は心の奥の奥にずっと奥にしまったまま、ずっとひた隠しにしてきた。
それをいつか、アンタに話せるのかな。
「最近どうよ」
これは世の中でごくごく一般的な質問。
まさに全世界共通の言葉だ。
俺のその問いに、アンタは答える。
どうとは、一体どういうことか、って。
それは勿論決まってる。
最近面白いようなネタでもあったか、ってことだ。
「お前が欲しがるようなネタは無い。残念だがな」
「へえ~そう。セフィロスのことだからちゃっかりオイシイことしてんのかな~って思ってたけど」
「おいしいこと?」
怪訝そうにセフィロスはその言葉を繰り返す。
そっか、アンタの中でのオイシイは、きっと俺の世界のオイシイとは違うんだもんな。
俺は小指を立てて、
「こっちこっち」
なんて笑った。
なんつー古臭い仕草!
セフィロスは俺の言わんとしてることが分かったらしくて、ああ、そういうことか、と幾分か不機嫌そうになった。どうやらこっちの話題は嫌いらしい。
セフィロスの選ぶバーは、いちいち高級感が漂ってる。
値段とかじゃなくて、雰囲気。
こんなとこで男二人で肩を並べてグラス傾けちゃってさ。こんなのよっぽど生産的じゃないよな?年頃のオトコとしちゃさ?
でも、こんな洒落たバー、セフィロスが俺の他に誰と来てるのか、俺はそういうことが気になって仕方ない。女の子だったら、この雰囲気で、隣にセフィロスがいたら、そりゃもうきっとイチコロだろ?
「…まあ。正直にいえば、この間女に誘われたことはあった。だが、その気も起きなくて結局そのまま帰った」
「へえ~そう。じゃあ、まあ、チャンスはあったってことか」
「チャンス?そういうのは、俺がそうしたいと思ったときに使う言葉だ。まるでやる気も起きないのにチャンスも何もない」
「そっか」
俺は笑いながらグラスを傾けた。
―――うん、そっか。
セフィロスは、そういうシーンになっても、そういうふうにはならなかったのか。
でも何でその気が起きなかったんだろ。
「あっ、もしかしてその女の子、筋肉隆々だったとか!?じゃなきゃ、よっぽど顔の作りがアレだったとか…」
「いや。むしろ美人だった。それに随分と巨乳だったしな。お前だったら飛びついていただろうな」
「はあ!?失礼なんですけど!!」
「事実だろう?」
「ま、まあ…胸はデカいにこしたことないけどさ」
俺はもごもごとそう返す。
そりゃまあ俺は、単純寄りな男ですから…。
でも、そんだけナイスバディ&可愛い女の子でも、セフィロスはその気がおきないわけか。変わってるっていうか、変なヤツ。俺はそう思うと同時に、何だか嬉しくなった。
俺だったら、確かに飛びついてたと思う。
その子を前にしたらさ。
それなのに、セフィロスに対してこんなふうに思うのは失礼だなって思うけど…でも、やっぱり嬉しい。
――――――いや、違うか。
俺、ホッとしてるんだ。
セフィロスが、その子を選ばなかったことに。
「つか、じゃあセフィロスはさ、どういう女の子だったらやる気になるわけ?」
「やる気というか…そもそも、ただ身体の関係を求めるだけなら別に誰だって良いだろう?選ぶ必要もない」
「そうだけどさ」
じゃあ……―――――どういう人を、セフィロスは“選ぶ”んだよ?
身体の関係とかじゃなくて。
心から…どういう人を?
「…セフィロスはさ、どういう子が好きなんだよ?」
「どういう、か…」
セフィロスは少し考えるようにして沈黙した。
だけどその後に、答えじゃない言葉を俺に返した。
「ザックス、そもそもお前はどうしてそんな事が気になるんだ?そんなに気になるなら、むしろお前が推薦してくれ。俺のことを一番に理解してくれそうなヤツをな」
「は…?」
「……まあ。心当たりがあれば、の話だが」
セフィロスはそう言って俺の顔を見ると、少しだけ笑った。
俺は、暫く動けなかった。
洒落たバーでの一時は、そうやって過ぎていく。
―――――なあ、セフィロス。
俺は、いつかアンタに本当の話ができるのかな。
今までずっと、黙ってきた。
本心は心の奥の奥にずっと奥にしまったまま、ずっとひた隠しにしてきた。
それをいつか、アンタに話せるときが来たら。
その時は、どうか、今日みたいに笑って欲しい。
END