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神羅中庭に登場した物体にクラは大喜び!でも…!?(笑)
変テコ掲示板:セフィロス×クラウド
冬も過ぎ去ろうとするある日のこと、神羅カンパニーでは素敵なものが取り付けられた。
ソイツは天下の神羅カンパニー中庭にデンと鎮座しておられる。しかしてソイツの図体はと申しますと、これまた奇妙奇天烈。詳細を言うと、縦1メートル×横10メートル×奥行50センチの長方形で、とっても悪趣味…いや、素敵な趣味により、淵にはパチパチ光る豆電球が取り付けられていた。
丁度、電光看板といった感じである。
で、それはそれとして、ソイツがソコにやってきたのは実のところ、あるお方の趣味だった。いかにも趣味丸出しだった。趣味以外の何者でもなかった。
という訳でソイツが何をするものかといえば、はっきりさっぱりこれっきりで言えば、あんまり意味が無い。というか全然無いと良い切ってしまいたい。
とにもかくにもソイツが神羅の中庭にやってきた時、神羅社員にある一枚の回覧板が回ってき、その紙面によって栄光なる神羅社員諸君はソイツの実態を知ったという塩梅。
で、その詳細とは……。
“中庭に神羅電光掲示板が登場!”
―――――――――は…?
誰しもが心の中で即座にそうツッコミを入れた。
因みにそれは、公式文書で回ってきたのである。であるから公式文書の見出しの太文字がソレだったのだが、それはいかにもヤバかった。
…普通公式文書で「!」とか書くか、オイ!!
誰しもが心の中で即座にそうツッコミを入れた。
が、その下の文章ときたらもっと最高だった。ザブトン3枚並である。3000点並である。
“中庭に神羅電光掲示板が登場しました!実はこれ、外見のグロさゴツさと違って超すぐれモノ!兵舎と本社ビル1Fにある書き込み機で文字を打ち込むだけで掲示板に文字が流れます。これで待ち合わせに遅刻しそうな時も安心!文字は一文字90cm×90cmと大きめ設定だから視力の悪い人も快適にキャッチできます。皆様、お誘い合わせの上、是非ご活用下さい!”
「……」
「……」
その文書を読んだ誰しもが口を閉ざした。中には煙草をポトリと落としてボヤ騒ぎを起こした者もいる。
―――――――っていうか、そんなの携帯で連絡つくし!
―――――――むしろ面倒だし!恥ずかしいし!
―――――――ってか!お誘い合わせしたくないし!
…と、それぞれツッコミどころ満載のその文書にツッコミを入れる。因みの心の中で、である。
この内容が果たして公式文書として相応しいのかどうかというところより、そんなもの作って何をやっとんだウチの社は、という方が皆の疑問であったことは言うまでも無い。
しかしてコレは公式文書で回ってきた…イコール上層部の決定で作られた、という事であり、大体のマトモな社員は、その文書をサクッと無視していた。
―――――――――しかし。
この神羅電光掲示板の言いだしっぺである某人は、この変テコな物体がどれだけ皆に活用されているかという事を気にしているらしく、折角サクッと無視していたマトモな社員諸君に、こともあろうかこんな事を聞き始めた。
「やあ諸君。あの電光掲示板は活用しているかな?」
ギクゥゥ
――――――――正に不意打ち。
廊下ですれ違い、あ、お早う御座います、なんて律儀に挨拶したが最後。にっこり微笑む……ルーファウス副社長の恐怖。
もし此処でバカ正直に「え~あんなの使えないっすよ~」なんて言おうものなら、早速、墓の手配をせねばならない。
そんな訳で、まだまだ死にたくないマトモな神羅社員諸君は、声を揃えてこう言うのだった。
「すっごく便利ですっ」
―――――――――嘘付け!……心の中でそうツッコミながら。
そんなこんなで結局誰も本当は使用していない神羅電光掲示板(工事費およそ500万ギル)だったが、たま~にこんな奇特な人間もいた。
そう、例えば兵舎の中に。
「スゴイよね~コレ!だって私用で使っても許されるんだよっ!」
そう言って興奮している兵士の名は、クラウド。
普段からちょっとズレていた(※本人は認めていない)彼は、中庭に現れた神羅電光掲示板を見てはウズウズしていた。
ああ……使ってみたい――――!!
しかし、しかし…である。
本来誰でも使って良いはずのその掲示板、クラウドは使わせてもらえなかった。それが何でかというと、別に一般兵だからとかそういう正当な理由からではなく、実は単純、セフィロスにこう言われていたからである。
「恥ずかしいからやめろ!」
勿論クラウドは反論していた。
「え。楽しそうじゃん。だって、セフィロスおはよ~とか、そういうのまで流しちゃえるんだよ?」
「流しちゃえないでくれ!頼むから!真面目に!」
「え――……」
楽しそうなのになあ、そうブツブツ呟きながらクラウドは口を尖らせたものである。
だってそれはクラウドにとって明らかに楽しそうだったのだ。セフィロスおはよ~も去ることながら、セフィロス何してるの?、とか、セフィロス大好き!、だとか、セフィロスのバカ!、とかだって書けるワケで、 愛の告白どころか喧嘩までできちゃう超優れモノ…これはクラウドにとって非常に魅力的だった。
これの書き込み機は兵舎の中にも一台あるから、書き込もうと思えばいつでもできる。いつでも「セフィロス大好き!」が書けてしまうのだ。それどころか「セフィロスは俺のモンです、エサを与えるべからず」と、宣伝兼浮気防止まで出来てしまう―――――…ああ、素敵。
これを使わないでおく事などできるだろうか?―――――否、できない。(反語)
しかし当のセフィロスがそう言うわけであって、やはりクラウドは使えないのである。それでもやっぱり何とかしてこの電光掲示板を使ってやろうという野望にバーニングしていたクラウドは、セフィロスが何故それを使うなと言うのか、というところを訓練以上に真面目に考え込んだ。
そこで出てきた答えがコレである。
―――――――セフィロスの事を書かなきゃ良いんだ!
そう…確かセフィロスは言っていた。“恥ずかしいからやめろ”と。
でもその掲示板、名前を打ち込まなければ誰が書き込んだかも分からないワケだから、例えばクラウドが「セフィロス大好き!」の“セフィロス”の部分を抜かせば誰が書いたかも、誰へのメッセージなのかも分からないのである。
「そうだな…うん!セフィロスにだって気付かれなきゃ良いんだ!よーし……」
何が何でも電光掲示板を使いたかった愛社精神たっぷりのクラウドは、セフィロスという文字を使わない事を条件にその電光掲示板に書き込むことを、海よりも深く決意した。
その日、セフィロスは少し機嫌が良かった。
何故かといえば面倒なことこの上ない仕事をザックスが快諾してくれたからである。という訳であるからセフィロスは一気に時間を持て余す事となり、そういう素敵すぎる時間は勿論当然クラウドと一緒にまったり過ごそうと思っていた。
そういう幸せ真っ只中のセフィロスは、あろうことか鼻歌なぞを歌い、恐ろしいことにはバックに花まで背負っていた。…少女漫画並である。
思わず輪郭線まで繊細に細くなろうかというところだったが、かろうじてそれを免れたのは実に幸い―――――――だったのだと思う。…多分。
しかしその“幸い”はショックの上に成り立っていたらしく、そのショックは浦島の如くセフィロスの髪を白髪化しそうな勢いだった。…というか元々銀髪だけど。
で。
それは何かと申しますと、あの悪名高き…いや、素敵すぎる神羅中庭の電光掲示板だったわけで、たまたまそこを通りすがって「ああ、あの妙なヤツか」とか何とか思っていたセフィロスは、その画面を見た瞬間にカチンと氷のように固まった。
誰かファイアをかけてくれ―――――――そう切実に思う。
神羅中庭の電光掲示板は、周囲に付けられている豆電球をピコピコ点滅させながら、あろうことか文字を流していたのだ。
―――――――…一体誰が!?
―――――――アレを使うだなんて芸当を…!?
セフィロスでなくともソレを目にしたマトモな人間はブリザド加工された身の中でそう思ったものである。
しかし問題はソレだけではない。そう―――――もっと深刻な問題は、その文字の内容である。その文字は、90センチ×90センチというバカデカさでもって、ピカピカ光る豆電球に歓迎されながらもスイスイスーイと流れていた。
『ヒーロー めちゃラブ♪』
――――――――!!!!!!!!!!
セフィロスは開いた瞳孔をどう狭めようかと悩む暇も無く、とにかくその文字に呆然とした。
因みにこの文字、一定時間エンドレスであるらしい。
…故に、ずっと「ヒーローめちゃラブ♪」がグルグルしている。
「…ちょ…っと待て。」
―――――――無論、文字は待ってくれない。
それどころかスイスイスーイと快適に流れている。さすが工事費500万ギル!と感心したいところだったが、誠に残念ながらそれはできない相談だった。
あの悪趣味…じゃなくて素敵な掲示板をとうとう誰かが使ったということに驚き中庭に集まってきた社員諸君は、一斉にその掲示板の文字を見遣り、一斉にこう言い出す。
ザワリザワリ…人の噂も何とやら。
「なァ…ヒーローって…英雄?」
「ってことは…セフィロスの事かな」
「え。でも、めちゃラブ♪って…語尾に♪ってどうなんだよ。なァ…」
「さァ…」
それらの噂を背で受けていたセフィロスは、ブリザドどころかブリザガ加工になっていた。
ああ―――――――誰かファイガを…。
神羅電光掲示板にそんな事を書き込んだ輩はすぐに分かる。セフィロスには目に見えている。しかも英雄をちょっぴり捻ってヒーローと書いておけば誰も気付かないさなんて容易なことを考えそうな輩も一人しかいない。
セフィロスは持ち前のヒーローパワーでブリザガ加工にピキンと亀裂を入れると誰もファイガをかけてくれないものだから自らそれを解凍した。
その時の気合の一言はコレに尽きる。
間違いない。
「――――――――クラウドォォォォォォ!!!!!!」