言霊(2)【セフィクラ】

セフィクラ

「今日は早いな。どうした?」

「うん…」

セフィロスの言う通り、今日はいつもの倍くらいの早さで終わった。

セフィロスはいつも通りだったけど、俺にとってはシチュエーション的にやっぱり刺激があったのかもしれない。

だって考えてみたら、いつも俺が寝てるベッドなんだし。

セフィロスは簡単に処理なんかしながら、もう服をビッチリ着込んでる。

「あのさ」

俺はそんな様子を見ながら、ふいに声をかけた。

「何だ」

普段よりかはちょっと優しめの声。ゲンキンだよね、そういうの。

「本当はどう思ってるの、俺との…こういうコトとか、さ」

これはずっと前から疑問だった。セフィロスがどう思ってるのか、って事。

だけど本当は「関係」っていうより「俺自身」について聞いてみたい。

でもそんなダイレクトに聞くのはやっぱり恥ずかしいし、俺はなるべくフィルタをかけてそう聞いてみる。

「お前との、関係という事か?」

「うん、まあ…そうだね」

ちょっと眉根を寄せて、セフィロスは俺を見てる。

「言葉がそんなに必要か?」

「え」

言葉で表現すべきものなのか、ともう一度念を押されて、俺は迷ってしまう。

セフィロスは言葉が多い方じゃないからそう言うのも分かるけど、言葉で安心できる部分ってあると思うんだけど。

でも俺はちょっと分からなかった。

だってその答え方じゃ「好きでそうしてる」のか「どうでも良いけどそうしてる」のか、さっぱり分からない。

「じゃあさ、俺の事は?」

もどかしくなって、俺はついにそう切り出す。セフィロスの目を見て言ったものの、結局は恥ずかしくなって目を逸らしてしまった。

視界の端の方で、セフィロスは笑ってる。

「お前は、良い退屈凌ぎになってくれてる。安心しろ」

「た、退屈凌ぎって…」

やっぱりその程度か。

俺は落胆してしまう。でもまあ、分かってたことかもしれない。

期待するだけ無駄なんだ、この人相手じゃね。

でも、でもさ。退屈凌ぎに誰かを抱くっていうなら、別に誰でも良いんじゃないか?

何で、俺なんだろう?

やっぱり分からない。

「セフィロス、言霊って知ってる?」

「言葉には魂があるという、あれか?」

ふと思い出して、俺はそんな事を聞いてみる。

言葉には魂がある、言葉にしたら真実になる…誰かが言っていた言葉。

全く信じられない事柄だな、と俺の言葉より先にセフィロスは考えを口にした。

確かに俺も信じられなかったけど、でも今は縋りたい気がするよ。

もし、本当になるなら。

「…試しに言ってみてよ、セフィロス」

俺はちょっと考えてから、そう言ってみる。

「言う?何を?」

セフィロスは、心底分からない、って感じに首を傾げる。これは意地悪じゃない。本当に理解不能なんだろうな。

でも。

単なる自己満足かもしれないけど、聞いてみたいよ。

その口から。

「好きって言ってみてよ、俺の事」

「……」

言ってから、俺は真面目に泣きそうになった。

別に答えをくれないからじゃない。セフィロスのリアクションがあんまりにも予想通りで、はっきり言って悲しくなってきたんだ。

だって沈黙するって事は、そんな事は考えてもみなかった、って事と一緒だから。

本当、クリティカルヒットだって。

「…そうか。お前が聞きたがっていたのは、そういう事か」

そう言って、セフィロスはまた嫌な笑いなんか浮かべ始めた。

ああ、やっぱり言わなきゃ良かった。

しかも、何か怖い。

「まあ言ってやらない事もないな」

「えっ!」

俺は驚いて思わずそんな声を上げた。

言ってやらない事もないって…しかしまた遠回りな表現だなあ。でも、もしかしたら言ってくれるかもしれないって事だよね。

いつ言うのかな?

俺は期待しながらセフィロスの顔をじっと見る。

…あれ?…笑ってる。

「…騙した?」

「いや?」

セフィロスは可笑しそうに笑って、しかも俺に大打撃を食らわせた。

「ソルジャー昇格の時に、記念に言ってやる」

俺は呆気にとられた。

それはまさか、ソルジャーにならない事には資格も無いって事か。

…やっぱり厳しかった、俺はそう思いながらもセフィロスに言った。

「了解!」

 

 

END

 

 

RETURN

タイトルとURLをコピーしました