「今日は早いな。どうした?」
「うん…」
セフィロスの言う通り、今日はいつもの倍くらいの早さで終わった。
セフィロスはいつも通りだったけど、俺にとってはシチュエーション的にやっぱり刺激があったのかもしれない。
だって考えてみたら、いつも俺が寝てるベッドなんだし。
セフィロスは簡単に処理なんかしながら、もう服をビッチリ着込んでる。
「あのさ」
俺はそんな様子を見ながら、ふいに声をかけた。
「何だ」
普段よりかはちょっと優しめの声。ゲンキンだよね、そういうの。
「本当はどう思ってるの、俺との…こういうコトとか、さ」
これはずっと前から疑問だった。セフィロスがどう思ってるのか、って事。
だけど本当は「関係」っていうより「俺自身」について聞いてみたい。
でもそんなダイレクトに聞くのはやっぱり恥ずかしいし、俺はなるべくフィルタをかけてそう聞いてみる。
「お前との、関係という事か?」
「うん、まあ…そうだね」
ちょっと眉根を寄せて、セフィロスは俺を見てる。
「言葉がそんなに必要か?」
「え」
言葉で表現すべきものなのか、ともう一度念を押されて、俺は迷ってしまう。
セフィロスは言葉が多い方じゃないからそう言うのも分かるけど、言葉で安心できる部分ってあると思うんだけど。
でも俺はちょっと分からなかった。
だってその答え方じゃ「好きでそうしてる」のか「どうでも良いけどそうしてる」のか、さっぱり分からない。
「じゃあさ、俺の事は?」
もどかしくなって、俺はついにそう切り出す。セフィロスの目を見て言ったものの、結局は恥ずかしくなって目を逸らしてしまった。
視界の端の方で、セフィロスは笑ってる。
「お前は、良い退屈凌ぎになってくれてる。安心しろ」
「た、退屈凌ぎって…」
やっぱりその程度か。
俺は落胆してしまう。でもまあ、分かってたことかもしれない。
期待するだけ無駄なんだ、この人相手じゃね。
でも、でもさ。退屈凌ぎに誰かを抱くっていうなら、別に誰でも良いんじゃないか?
何で、俺なんだろう?
やっぱり分からない。
「セフィロス、言霊って知ってる?」
「言葉には魂があるという、あれか?」
ふと思い出して、俺はそんな事を聞いてみる。
言葉には魂がある、言葉にしたら真実になる…誰かが言っていた言葉。
全く信じられない事柄だな、と俺の言葉より先にセフィロスは考えを口にした。
確かに俺も信じられなかったけど、でも今は縋りたい気がするよ。
もし、本当になるなら。
「…試しに言ってみてよ、セフィロス」
俺はちょっと考えてから、そう言ってみる。
「言う?何を?」
セフィロスは、心底分からない、って感じに首を傾げる。これは意地悪じゃない。本当に理解不能なんだろうな。
でも。
単なる自己満足かもしれないけど、聞いてみたいよ。
その口から。
「好きって言ってみてよ、俺の事」
「……」
言ってから、俺は真面目に泣きそうになった。
別に答えをくれないからじゃない。セフィロスのリアクションがあんまりにも予想通りで、はっきり言って悲しくなってきたんだ。
だって沈黙するって事は、そんな事は考えてもみなかった、って事と一緒だから。
本当、クリティカルヒットだって。
「…そうか。お前が聞きたがっていたのは、そういう事か」
そう言って、セフィロスはまた嫌な笑いなんか浮かべ始めた。
ああ、やっぱり言わなきゃ良かった。
しかも、何か怖い。
「まあ言ってやらない事もないな」
「えっ!」
俺は驚いて思わずそんな声を上げた。
言ってやらない事もないって…しかしまた遠回りな表現だなあ。でも、もしかしたら言ってくれるかもしれないって事だよね。
いつ言うのかな?
俺は期待しながらセフィロスの顔をじっと見る。
…あれ?…笑ってる。
「…騙した?」
「いや?」
セフィロスは可笑しそうに笑って、しかも俺に大打撃を食らわせた。
「ソルジャー昇格の時に、記念に言ってやる」
俺は呆気にとられた。
それはまさか、ソルジャーにならない事には資格も無いって事か。
…やっぱり厳しかった、俺はそう思いながらもセフィロスに言った。
「了解!」
END