爪痕(1)【ツォンルー】

ツォンルー

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 ■DARK●MEDIUM

ルーが無抵抗な理由、それはツォンが…。鬼畜主任。 ★18↑

爪痕:ツォン×ルーファウス

 

少し怯えた表情を見せる相手を冷静に見下しながら、その服を剥ぎ取る。それから先は単純な作業の連続で、ツォンにとっては簡単極まりない動作でしかなかった。

怯えた顔をして、ツォンの与える強引な刺激に顔を歪ませる。

どんなに手荒に扱ってみても文句一つ言わず、どんなに痛みを与えてみても叫びさえしない。声を出すなと言えば、唇をかみ締めて本当に何一つ声を漏らさない。

ただただ、怯えた表情をしながら我慢し続ける。我慢しながら自分に抱かれ続ける。

まるで抵抗一つしない―――玩具のような、人。

 

けれど、事の最後に振り返ると、その顔は決まって涙に目を潤ませていた。

頬には乾かない涙の跡。

ツォンには全く理解できない。

そんな泣くほどに嫌ならば、嫌だと言って抵抗すれば良い。

何の為にそこまで我慢をして、何の為に抱かれ続けるのか。

 

 

 

時間が昼を回り、午後の仕事が再開する時分、その姿は唐突にルーファウスの眼に入った。

常日頃から腰を据えている副社長室のすぐ側の廊下で書類を手にしていたルーファウスは、その部屋に入ろうとしてドアノブに手をかけた瞬間に固まった。

廊下の向こうから見えている姿には気付いていた。
ツォンだった。

あまり気配を感じさせないその姿を目にした瞬間、ルーファウスの鼓動は早まり、ドアを開けようとする動作が俄か早まる。けれど、それは止まってしまった。

いつの間にか、背後まで来ていたその人の手によって―――。

「……!」

ふっと肩に手がかけられた。ドアノブに手を伸ばしていたルーファウスは、早まる鼓動を抑えられないままに、一点だけを見つめる。

来た、と思う。

今日もまた、来てしまった。

背後からワザと耳元に囁くようにするツォンに、身体はもう言うことをきかなくなる。

「怯えてるんですか、ルーファウス様」

「な…何か仕事の用か?」

そんなふうにあくまでシラを切るものの、返ってくるのは低い笑いだけだった。面白いように笑いながら、その次には背後から首筋をなぞられる。ビクン、と身体が揺れる。

怯えているのだろうか、この男に。

ルーファウス自身にもそれは分からない。

ただ、そうやって訪れる時間は、ルーファウスから普通の思考を奪っていた。いつもの余裕はどこかに吹き飛び、何時の間にか捉えられた小動物のように身動きができなくなる。

どうされるかは良く分かっている。

滅茶苦茶にされるだけなのだ。そこに感情も何もなく、ただ快楽の道具として滅茶苦茶にされるだけ―――それだけのための時間。

本当なら、それに対する拒否くらいは簡単にできる。けれど、ルーファウスにとってそれは到底無理な話だった。拒否なんか、できない。抵抗すら、できない。

そんな事をしたら……。

「どこが良いですか、今日は?」

そんなふうに言いながらツォンの手は背後からルーファウスの唇を押し開けた。強制的に開けられた口の中に指が滑り込んで、思わず「あっ」と声が出てしまう。

「人…人がいない所…」

取り合えずそれだけを必死に言うと、ツォンは、そうですか、と述べた後にその指を引き抜いた。ルーファウスが小脇に抱えていた書類を一瞥しながら、

「では」

と誘導をする。逃れられない磁気のようなものがそこにはあり、ルーファウスはそれにただついていった。

意味をなさない書類を抱えたままに。

 

 

 

神羅内で人がいない場所は限られている。どの階にも人が働く姿があるし、廊下にはひと気が無いといっても、それは危険すぎる。

だから決まってそういう事は、ルーファウスのプライベートな空間か、若しくは使われていない部屋で繰り広げられていた。

その時も例外なく、ツォンが選んだのは地下の物置のような場所だった。

そこは、今では不必要となり処置に困っている物品が駐屯してある部屋で、そう滅多に人は来ない。鍵が常にかけられているだけあって、出入りする人間も限られている。

どこから持ってきたのか、ツォンはその部屋の鍵をポケットから取り出すと、鍵穴に押し入れた。捻ると、小気味良い音がしてドアが開錠される。

それを聞きながらツォンの背後で立ち尽くしていたルーファウスは、空ろな目をしていた。ツォンは鍵を持っていた。元々それが理由で、その為に、持っていたのだ。

開いたドアの中に入り込んだツォンは、どうぞ、とルーファウスを誘導する。そのまま静かに入り込むと、また先ほどのようにツォンは施錠をした。

部屋は、微かに埃臭い。

「書類は置いたらどうです?」

ツォンはそう言いながら上着を脱ぎ始めた。

「そうだな」

近くにある未使用のデスクにそれを置くと、ルーファウスは俯きながら自分の上着のボタンに手をかけた。けれど、そこから手が動かない。

「どうしました。…私が脱がして差し上げましょうか?」

そんなふうに言ってツォンは笑う。そんなことはしなくて良い、そう思ったが声にはならなかった。

体は無意識に拒否をしているのが分かる。けれど頭では、早くすれば良い、と思う。それはかなり矛盾した内容で、ルーファウス自身も理解はしていた。

動作が遅い相手を見て、ツォンは苛立ったのだろうか。素早く近くに寄ると、無表情のままルーファウスの服を強引に引っ張った。

「怯えているんですか?」

さっきもかけられたその言葉に、今度は返答がある。

「違う…怯えてなんか」

「じゃあ何故、躊躇うのです」

違うから…こんなのは、違うから。

そう答えたい衝動をぐっと抑え込み、ルーファウスは黙り込んだ。それはこんなふうにツォンと二人きりになるたびに抑えてきた言葉で、今なお口に出せないものだった。というよりか、口に出してはいけないものだから。

ルーファウスにはツォンの心が分からなかった。

確かにこんなふうになってしまった原因を作ったのはルーファウス自身で、それは重々わかっているけれど、どうしてそんなふうにツォンが解釈してしまったのかが良く理解できない。

そしてまた、ツォンにもルーファウスの心が理解できなかった。

どう考えても嫌がっているようにしか見えないのに、のこのことついてくるその様子は、本当に苛立ちしか生まない。何度か言葉を通して離脱の余地を与えたというのに、頑なにそちらの選択肢を拒否する。行為を続ける方ではなく、行為をやめる方に拒否をするのだ。

どう考えても不可解―――、
しかしその関係は、ツォンにとってみれば一種の精神的快感でもあった。

一度ビジネスの場に戻れば、それはそれ、二人は神羅での立場を弁えている。だからルーファウスはツォンに令を下し、ツォンはそれに従う。

それが、この空間だけは違う。馬鹿馬鹿しいほど、この若年の副社長を陥れることができるのだ。

拒否もしない、抵抗もしない。ひたすら従順。…それは本来ならツォンのあるべき姿だったから、ルーファウスがそうしているのを傍目に見ると可笑しくて仕方がない。

「地下ですから。どうぞ、ご自由に」

ツォンはそう言いながらルーファウスの身を近くの棚に押し付けた。

その言葉はルーファウスに切ない顔をさせる。省略された言葉が分かったからだ。

それが言いたいのだろう。地下で誰も寄り付かない場所だから。

「貴方の望む通り、二人きりですし。…どういう感じか教えて下さい。嬉しい?」

「……」

首筋に吸い付かれる感覚を覚えながら、ルーファウスは顔を歪ませた。

どう答えて良いかが分からない。本当なら嬉しいはずのことも、こうなっては嬉しいという感情も薄れてしまう。それでも悪あがくようにツォンの背に手を回し、ルーファウスはなるべく何も考えないように目を閉じた。

すぐ終わる。きっと、すぐ終わるから。
少しくらい痛みはあるだろうが、それを通り過ぎればそれで終わる。

そうしたら、また優しい思い出に耽れば良い。

「貴方はこういう時、本当に人形みたいですね」

ふっと笑いながら、ツォンが囁く。何も返さない、まるで人形のようなその人に向かって。

今や存分に曝け出された肌は、暗く煙った部屋のなかで光っているように見える。ツォンはその輪郭を指先でつうっとなぞりあげると、同時に胸の頂を舌で攻めた。

少しなぞってやっただけで固くなったそこを、今度は舌先で転がしてみる。ツォンの背に置かれていた手が、一瞬にして力を増した。

「あ…っ」

声を漏らすことには抵抗があったルーファウスだが、気づくとそんなふうに吐息が宙を舞う。ルーファウスの脳内では、いまこうして行われている事が優しくて暖かいもののように描かれており、その幻想がルーファウスに甘い吐息を吐かせていた。

もちろん、それは幻想であって現実ではない。それは分かっている。

でもいつからか、ルーファウスはそんなふうに頭の中で逃げ場所を作り出していた。

目前で自分を犯すその男は、いつも眼にしていて、一緒に仕事をしているツォンに他ならない。それは目を開ければまざまざと突きつけられるだろう現実で、ルーファウスにとってその事実は辛いことだった。

だからルーファウスは、自分が本当に求めているツォンを頭に描いていたのだ。

その思考の中だけで生き続ける優しい男を想像し、いま体を這うのがその男の手であれば良いと願う。その男が自分を抱いているのだと思えば、苦しみのない快感に変わっていくから。

「ツォン…、ツォン」

「好きですね、名前を呼ぶのが」

腰から下った内股辺りをさすりながら、その手は半身の中枢を掴み上げた。展開はいつもこうしてやや早く、そこそこに愛撫をすませると後は辛そうに顔を歪めるルーファウスを見るのがツォンにとっての楽しみといえた。

良く分からないからこそ、そうして滅茶苦茶にしてやりたくなる。
もちろん、そんなツォンの思考をルーファウスは知りもしないだろうが。

掴んだその手を機械的に動かし始めたツォンは、胸から腰にかけてのラインを舌でなぞった。どちらかというと白い肌、筋肉質というわけでもなくただただ細くすっきりした体、それがその舌の為か逃げるような動きをする。

「はあ…あっ」

握りこんだ先はそこそこに固く大きくなり、先端には耐え切れずに漏れ出た精液が溜まった。それに気付いて指先で拭うと、

「足りないか…」

そう呟きながらツォンは、奥の穴にそれを突き刺す。

まだまだ受け入れてくれる姿勢は無いが、それでも強引に突き進むと、背中にあったルーファウスの手が爪を立ててツォンの肌を抉った。その手の力にツォンも僅か顔を歪ませる。

それでも更に奥へと突き進むと、ルーファウスの体は指の付け根までを飲み込んだ。

「いっ…痛…い…」

唐突にやってきた痛みに、思わず顔が歪む。体内でぐちゅぐちゅとかき回されると、ルーファウスの逃げ場もさすがに薄れたらしく、思わず目を開けてしまう。するとその先には、自分を犯す男の顔があった。

しかしその男も、時に妙に優しい顔をする時がある。

ただしそれは、自分が痛みに苦しみだすその時だけだと、ルーファウスはとうに知っていた。後は、下半身と言葉で攻め続けられるだけで。

案の定、それは直ぐに責め苦に変わった。

急速に駆け巡り始めた指は、体内の柔らかい部分に傷をつけるくらいの手荒さでもってルーファウスを攻め上げる。痛みと奇妙な感覚が交錯する。

「大丈夫ですよ。直ぐ気持ちよくなります」

悔しいことに、ツォンが言い放ったようにその痛みは徐々に喜悦へと姿を変えていった。かといって現実に浮かび上がるその顔が苦痛ではないとは言い切れず、やはり心の奥底では何か嫌な感情が渦巻く。

二人の距離は二十センチほどしかなくて、ツォンは大体、その至近距離から見下すようにルーファウスを見ていた。

こんなふうにしても、実際ツォンにとって得という得は何一つ無い。ただ、自分の手に落ちていくのを見るのも一興というだけ。

「足りないですか、指なんかでは?」

もう既にぬっぷりと咥え込んでいる体に、笑いを漏らしながらツォンは言った。

「違…っ…あっ…」

「違わないでしょう?体は欲しがってますよ」

かけられる言葉に、思わずルーファウスは唇を噛む。ぎゅっと目を瞑って、手に力を込めると、ツォンの背中に立てられた爪はさらに深く傷を作るように服の上から肌を侵食した。

それは抵抗のためではなかったが、ツォンにとっては「せめてもの抵抗」と映ったらしい。

「嫌なら嫌と言いなさい。直ぐ止めて差し上げますよ」

ルーファウスはそれに何も答えなかった。

「そんな苦痛そうにして…それでも耐えますか?」

どうせいつもこんなふうに言葉を与えても、ルーファウスは何も答えやしないのだ。その心理は良く分からない。

けれど、拒否をしないならこのまま事を運べば良いだけの話である。

ツォンは一旦、指を引き抜くと、暗がりの中で都合のよい場所を目線だけで探した。元々は使われていないものがガラクタのように置かれているような場所だから、あまり良い場所があるとはいえない。

それでもそのガタクタの山から古いデスクを見つけると、ルーファウスの体を軽く持ち上げ、そのデスクまで運んだ。

「さあ、どうぞ」

そう言いながらルーファウスの体をデスクに放り出すと、急ぐでもなく己のベルトに手をかけて取り去る。

その動作の一つ一つを、切なげな目つきでルーファウスが見ていた。

 

 

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