嗚呼!悲劇的展開(1/2)【ツォンルー】

ツォンルー

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■POP●SHORT
ルー副社長就任前の話。主任壊れてます…お下劣かも!?

嗚呼!悲劇的展開(1/2):ツォン×ルーファウス

 

とうとうルーファウス様が副社長に就任される。

嗚呼いつかこんな日が来るとは思っていたが、まさか本当にくるとは。

私は軽い目眩と溜息と空腹に襲われた。……ん、空腹?

はっ、しまった!もう昼の休みを30分も過ぎているではないか!いかんいかん、何か入れなくては。

そう思い私は颯爽と昼食をとるべく社内を奔走した。

 

 

 

会社を出て少しすると、小綺麗なレストランがある。

そこは昼にはバイキングをやっていて、幹部クラスは大概此処で食事をするのだ。因みにこのレストランはルーファウス様の我儘…いや、たっての希望で建てられたもので、勿論ルーファウス様もご愛用なのだ。

私はそこで毎日スクランブルエッグとハムステーキと海鮮サラダとフカヒレスープをいただく。今日もトレイなどを持ってレーン状に並んだ料理を吟味していく。

と、何とけしからん事にフカヒレスープに終了の立て札が!何たる悲劇!

一体誰が私のフカヒレスープを……まあいい。仕方ない、今日はコーンスープで我慢するとしよう。

それから…あ、これは極悪カリカリベーコンではないか。私はこれには嫌な思い出がある。その油の量も去ることながら、この焦げ具合!これが咽喉に突きささった時の悲惨さなど誰にも分かるまい。

とにかく海鮮サラダとハムステーキとスクランブルエッグは無事だったらしい。私はそれをトングで摘み上げると自分の皿に盛り合わせた。

今日も色合いは上々、気分も快晴。

「あ、すみません」

突然ぶつかってきた男がそう言って謝るのを、何、気にするななどと言いながら躱したは良かったが、ふと目をおとした先の皿の上は荒れた大海の如く無法地帯と化していた。

「……」

さらば、私の芸術よ。

ふと腕時計を見ると、時間はもう残りを20分きっていた。いかん、落胆などしている場合ではない。急がねば。

私は適当な席に腰を落ち着かせながら、食事をし始めた。

しかしどうだ。

フォークを突き刺した先のスクランブルエッグの中に、こともあろうか殻の破片が!何たる事だ!

飲食店にあるまじき失態とは正にこの事。思わず私はお客様の声ボックスにクレームをつき出してやろうかと憤慨したものだが、此処はぐっと我慢をすると、食事を続ける事にした。

何せ時間は無いのだ。時は金なりとは良く言ったものよ。

背中に哀愁を漂わせながらそんなふうに食事をする私は、時間を気にしながらも周囲を見回した。

何といっても此処はルーファウス様ご愛用な店なのだ。

即ち、ルーファウス様は此処で昼食をとられる訳で、今もこの店内のどこかにいらっしゃる事80%という事になる。因みに残り20%は私の遅刻分とルーファウス様の気紛れ分なのは言うまでも無いだろう。

ふむ…それにしてもこのねっちょりしたコーンスープの感覚よ…私に喧嘩を売っているのかどうか問いただしたいものだ。

しかも殻入りスクランブルエックはもう良いとしても、今日のハムステーキは何だか油分が多い。ちゃんとJASマークのついた奴を使っているのか?疑わしい…。

そんな取り留めの無い粗捜しを堪能しつつも私は、食事をあれよという間に終わらせようとしていた。

しかし。

「うぐっ!」

こともあろうに何ものかが私の背中を叩き、私は咽喉をつまらせた。呼吸困難になりそうなのをやっとの勢いで押さえると、私はそのふとどき者に烈火の如く怒るべく鬼の形相で振り返った。

「誰だ!この不埒……」

しかしそこまで言って私は思わず口からコーンが飛び出しそうになった。

「ツォン、遅い食事だな」

そのお声、そのお顔、そのお姿はっ。

ルーファウス様ではありませんかっ!!!

何とこんな姿を見られるとは思いもよらなかった…不覚!

頼れる男・ツォン―――それがルーファウス様の中の私の異名…。(希望推定/高校生程度)だのに私ときたら口からコーンを吹きださんばかりの勢いではないか。

おお、ルーファウス様。

どうか「うわ、こいつ今コーン飛ばそうとしてたぞ。最悪~っ」などと思われないで下さい。

私だってスキでこんなキャラを演じているわけでは…っ!

そう私が自作自演状態になる横で、ルーファウス様は不思議そうな顔付きになった。

「あれ…今日はコーンスープか。フカヒレ美味かったぞ」

お前かああああっ!

「今日は油の手配がうまくいかなかったらしくて、昨日の残りを使っているらしいなあ…」

責任者、あなたでしょうがあああっ!

「そうだ、ツォン。私の副社長就任について話があるんだ」

そう言われてやっと私は思い出した。そういえば元々こうして流し込み状態で食事をする事になったのもそれが原因だったのだ。

そう、今までは家事手伝いと同等の区分だったルーファウス様が、今度はちゃんと肩書き付きで神羅で働く事になるのだ。

嗚呼、なんて心痛を感じる事態だろうか。

当のルーファウス様は何も意に介さないかのようにモナリザの如く微笑んでいるがそんな場合ではないだろう。副社長なのだ。副とはいえ社長という言葉がついているのだぞ!?

それはお父上の片腕になるという事であって、それはもう多岐に渡る神羅の実情を目のあたりにするという事と同等なのだ。何も知らぬルーファウス様が汚れていく姿を見ろというのか、何と無代な!

私は胃が痛くなった。

その理由がそれなのか、はたまた油のせいなのかは神のみぞ知る所である。

「話とは何ですか」

「ああ、此処ではちょっと…な。後で改めて会わないか?」

「えつ!」

私は驚いて、思わず“つ”が大きなままに叫んだ。

まさかそれは二人きり?まさかそれは夜?

思わず明かりは消すかどうか考えながら私は、後でブレスガムでも噛まなくては、と真剣に考えた。

「どうも私の副社長就任を良く思ってない奴が多くてな」

「そりゃルーファウス様はまだお若すぎ…」

「でもお前は祝ってくれるよな?」

「当然です!」

その目につられ、私はついついキッパリそう言い切った。

「良かった。お前だけは信じてるぞ」

「ええ、そりゃあもう!」

ツォン、お前は罪な男よ…。

いくら目前のルーファウス様がお可愛らしいとはいえ、その笑顔一つで180度意見を変えてしまうとわ。ええい、文法など構うものか!

そんなこんなで本日夜にルーファウス様との密会が開催されることにあいなった。

嗚呼、愛の語らいか…はたまた、ボデートークなのか……ぶはっ。

 

 

 

夜、私は仕事の疲れも何のその、ルーファウス様の指定された部屋までツーステップを踏んで向かった。今宵はルーファウス様をご満悦にさせなければ成らない。その為の準備は完璧だった。

見よ、この用意周到振りを!

ブレスケアは完璧、シャツなどは仕事の最中に真新しいものに一新。

清潔感満点の私にルーファウス様も語尾にハートをつけて名前を呼んで下さる事うけあいだ。

私は指定された部屋の前まで行き、すかさず鏡を取り出した。

あ、いかん!鼻の下が完璧にのびきっているではないか!

これではツォン・ザ・クールを演出できん。あくまでビシッといかねば。下心などこれっぽっちもないといわんばかりが丁度良い。

私は己の頬をぺしぺしと叩いた後に、意気込んでその部屋に入った。

「遅くなりました」

ふふ、見よこの謙遜振りを。まだ時間には30分も早いというのに、私はまったくお茶目さんだ。

「ああ、ツォン。早かったな」

「とんでもございません」

私はにっこりと微笑んでそう言う。ルーファウス様は目前で椅子に腰掛けながらも笑顔でいらっしゃる。

「で、話というのは?」

かなり性急かもしれんが私は先を急いでそう聞いた。

というか、ぶっちゃけてもう既に言葉など不必要だった。

お祝いなら体でして差し上げます、ルーファウス様!いざっ!

「何かくれ」

「―――は?」

何だ?何が起こった?

私は二宮金次郎の如く固まった。そんな私に、悪戯をするガキの如く、さも当然そうな顔でルーファウス様は繰り返し言う。

「だから、祝いに何かくれ」

お前は祝ってくれるんだろう、と釘をさすように言われ、私は呪いのワラ人形と化した。この胸に刺さった五寸釘よ…一体何をお望みかい!?

「どういったものが…宜しいですか?」

私でも良いなら安上がりなのになあ。

「お前が考えてくれ。お前が私に選んでくれたものが欲しい」

「はあ、そうですか…」

ん、待てよ?

今何と言った?私が選んだものなら何でも嬉しい!?(やや混乱)

おお、勿体なきお言葉!

という事は何でも良いのだ。私がリボンぐるぐる巻きになってナマ物指定の宅配便でルーファウス様宅に届いたとしても、喜んで頂けるのだ。クール宅急便で届いてもホクホクとレンジで解凍して下さるのだ。…うえっ。

ほくそ笑む私に、ルーファウス様はにっこり笑いかけた。

「明日までな」

「はいっ!」

勿論ですとも!

……って、何!?明日まで!?

私は思わず聞いてしまった。

「では…これから買いに走れと、そういう…」

「嫌なのか」

「とんでもございません」

意気込んでそう言ったものの困り果てたのはいうまでもなく。大体この時間に店が開いているだろうか……否、そんな事があるはずもない。コンビニと安さの殿堂ドン●ホーテくらいのものだろう。

しかしルーファウス様への貢ぎ…いや、お祝いにディスカウントという訳にはいかん。

やはりコンビニ宅配で備考欄:ナマ物か!?

「分かりました。努力致します」

私はなるたけ抑えてそう言った。その隣でルーファウス様が、5万以上な、といったが何も聞こえない振りをしてみた私であった。

 

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