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■POP●SHORT
セフィの強さの秘密を探るクラ。それがセフィにバレて…!?
強さの秘密:セフィロス×クラウド
クラウドを襲った災難……それは、ザックスの一言から始まった。
「なあ、クラウド。頼みがあるんだけど」
「何?」
何の気なしにそう聞いたクラウドは、まさかそのザックスの頼みがそんな大掛かりなこととは思ってもみなかった。
いや、実際それほど大掛かりなことではなかったのだろうが、結果的にそうなってしまったのである。無論、その時のクラウドには予想すらできないことだったが。
で、そのザックスの頼みといえば…。
「セフィロスの秘密~!?」
そう、それはセフィロスの秘密を探ってくれという、まるで探偵なみの依頼であった。
「そ!セフィロスには秘密があるみたいなんだ」
「どんな?」
「ああ、何でも強くなれる秘密ってのがあるらしい」
「ええ!?それ本当!?」
そんなものがあるなら自分が知りたい、思わずそう考えてしまったクラウドは遠慮もなく声を張り上げる。
しかしもしそんな秘密があるのだとしたら、セフィロスのあの強さは作り物だということだろうか?
そうだとしたらちょっとだけ残念な気もする…。といって、もしそれが本当ならば、なるほどと頷ける気もするが。
ともかくそんな強さの秘密とやらを探って欲しいというザックスに、クラウドはまず返答しなければならなかった。がしかし、根本的に疑問がある。
それは勿論…。
「あの…なんで俺が探るの?」
―――――ご尤も。
そんなに秘密が知りたいなら、ザックスが直接セフィロスに聞けば良い。いや、聞けないから頼むのだが、そうだとしても自分で探りを入れれば良いわけで何もクラウドに頼まんでも、という話だ。
しかしザックスは、頼んでいる身分だというのに胸を反らして人差し指でチッチッチッなどとやると、そりゃ無理だ、なんて簡単に言ってのける。
「俺がそれやると許されないわけよ。だってセフィロス、家にも上がらせてくれないし。ってなると俺は不法侵入しなきゃだろ?ところがクラウド、お前なら公認で家に上がれるし、その上甘い雰囲気で秘密だって聞きだせるってわけ」
「えー…まあ、そうかもしれないけど…」
でもだからって何でそんなリスクの高いことを関係ないクラウドがしなくてはならないのか、これはかなり疑問である。
確かにザックスの言う通りクラウドならば公的にセフィロスの家に上がることができる、これは正しい。
何でかって、クラウドはひょんなことからセフィロスとそれなりの関係になってしまったからである。
だからクラウドだけはセフィロスの近くにいても不自然ではないし、例えばそれこそ甘い雰囲気で聞き出そうというのも出来ないことではない。
しかし、どうだろうか。
それが不可能とは言わないけれど、果たしてそんなに簡単にいくものだろうか。
何しろこれは本当にリスクが高い。
そう思ってクラウドは、申し訳無さそうにザックスにこう告げる。
「で、でもさ…こう言っちゃなんだけど、セフィロスって容赦なく俺のこと怒ったりするんだよ。そんな秘密にしてること聞いたら、絶対怒るよ…」
「んな事ねえって!お前なら大丈夫!」
ザックスはあっけらかんとそんな無責任なことを言うと、いや~悪いなクラウド、などと勝手に話を進めた。…最悪である。どうやら聞く耳持たず、らしい。
そんなザックスにクラウドはゲッソリとしながら溜息を吐く。
きっとセフィロスは怒るに違いない。
どんなに甘い雰囲気でも、そんな手にセフィロスが引っかかるわけがない。それが証拠に、過去にはコトの最中に怒り出してしまったこともある。
ザックスの中にはどうやら「セフィロス<クラウド」という図式が出来上がっていうようだが、実際それは大きな間違いであった。
しかしそれを此処で訴えてもザックスが納得するとは思えない。というか、わざと納得しないに違いない。
――――――という事は。
「…やるしかない、ってこと…かあ」
はあ、と大きな溜息をついて呟いたクラウドの隣で、ザックスは現金にもニコニコと笑ってヨロシクなどと言った。
殺意ってこういう時に芽生えるんだろうなあと、クラウドが深く悟ったのは言うまでもない。
結局セフィロスの秘密とかいうものを探ることになったクラウドは、そのヒントさえ与えられることなくそれを実行に移すこととなった。
しかしそれにしたって秘密なんて検討もつかない。
「強さの秘密かあ…一体どんなんだろう?」
いつだったかセフィロスは牛乳が飲めないだとか言っていたが、まさかそれじゃないだろう。
背が伸びるから飲みなさいと言われてガブガブ飲んだにも関わらず結局お腹をこわして下痢をしたという素敵な思い出がクラウドの中にあったが、それでは強くはならなかった。
まあ便通が悪い時には良いかもしれないが、この際それはかなりどうでも良い。
となると、何か精力増強剤でも服用しているということだろうか。
しかしこれも過去の思い出からして無さそうである。
何しろセフィロスは、体調を気遣って部下が寄越してきたうんたらかんたらDとかなんたら皇帝液とかそんな類の増強剤を飲んだ瞬間に「うっ」とか何とか言い、更には「こんなマズいもの飲めるか!」などとすっかりトサカにきていた。となるとこの線は消えそうである。
しかしじゃあ一体どんな秘密があるというのだろうか―――――?
クラウドには本当にさっぱり分からなかった。
しかしともかく探りを入れなくてはならないから、まずはセフィロス宅を訪れようと思って、クラウドはそれを実行に移した。
それは丁度セフィロスと会う約束をしていた日で、約束の時間より早くその家に行き、その間に家の中を探ってみようというナイスアイディアである。
セフィロスと会う時は、特別な事を言われない限りはその人の家に行くことになっているから問題は無い。
その上その約束の日はセフィロスに何かの大きな任務が入っているらしく、帰宅するまで家で待っていろ、と言われていた。つまりこれは、実に好都合な時間だったのである。
さて、その当日。
約束の時間の一時間も前にセフィロス宅にやってきたクラウドは、サクッとその部屋を捜索し始めた。
まず此処でポイントなのは、クラウドの持参した荷物だろう。
隅々まで探せるようにと持ってきたのは懐中電灯、それからどんな細かいものでも見えるようにと虫眼鏡まで用意してきた。実に用意周到である。因みに此処では、その実用性は問わない。
で、そんなクラウドが最初に捜索し始めたのは冷蔵庫だった。
きっと食べ物や飲み物に秘密が隠されているに違いない――――そう思ったクラウドは、セフィロス宅の小型冷蔵庫をズシャッと開け放ち、すかさずササッとドアの影に隠れた。
「…よし。敵はいないみたいだ」
―――――居るわけが無い。
取りあえず恐る恐るその中身を眺めたクラウドは、冷蔵庫の住人を一つ一つ観察する。
住人達は実にさまざまで、サイコロステーキ300gパックからチョコボファーム直送有精卵までかなりのバリエーションだった。
というかそのサイコロステーキは一体誰が焼くんだろうとクラウドはかなり気になったものだが、それよりも賞味期限が4ヶ月前だったことにショックを受け、人の家の食材だというのにそのサイコロステーキ300gパックをパコッと勝手にゴミ箱に捨てた。これで一安心である。
「ええと、それから…あ、牛乳だ」
その物体を見つけたクラウドは、その途端に首を傾げた。
だってセフィロスは確か牛乳は飲めないと言っていたはずだから、そこから考えると此処に牛乳があることは実に妖しい。
「これは要チェックだ」
何がどう要チェックなんだか分からないがクラウドは真剣な顔でそう呟くと、更なる捜索に入った。
更なる捜索ではかなりのツワモノが次々と姿を現したが、特別妖しいという気配はなく、クラウドはさっさと次へ進んでいく。
そんなことをして―――――かれこれ30分経過。
さすがに冷蔵庫からの冷気で肌寒くなってきたクラウドだったが、それよりも冷蔵庫の方が危機だったらしい。
「閉めろよ!」と言わんばかりにしきりと警戒音が鳴り響いていて、最初はそれを無視していたものだが、あんまりにも煩くビービービーと鳴るものだから、さすがにクラウドも仕方なくそれを閉めたものである。
ともかく、冷蔵庫で妖しそうなものは牛乳だけだった。
しかし―――――。
「…牛乳が強さの秘密?」
まさかそうとは思えない。
クラウドは一人で首を傾げると、関係ないかな、などと思いながら次の場所を探そうかと体勢を変える。今迄膝を抱えるようにして座っていたから何だか妙に足が痛くなったような気がする。
「でもなあ…そんな手当たり次第に探してたら時間が…」
ふとそんな事を思ってクラウドが見遣った時計は、約束の時刻まであと30分であることを告げていた。
となるとあと30分の間にどれだけ探せるかが鍵になりそうだが、果たしてその中で見つかるだろうか。もっとポイントを絞らなければ、探すことすら厳しい気がする。
と、そこまで考えたクラウドは、あることを思いついてポンと手を叩いた。
「そっか!いつも俺が見たりしないところを探せば良いんだ!」
そうだ、そうに違いない。
そう思った途端にクラウドは目を輝かせた。
この前途多難の秘密探しの中で、まるでゴールを見たかのような塩梅である。残念ながらそれは、間違いなく幻だったが。
しかしそれでもそれは良い案だった。
だって普段クラウドが良く目にしている部分には別段妖しいものなんてないし、そもそも秘密のものだったら人には見られない場所に置いておくはずだ。となると、それはちょっぴり良い案だと思える。
じゃあ、早速――――!
そう思って少しばかりの元気と通常の体感温度を取り戻したクラウドは、いつも自分が見ない場所へと一歩づつ歩を進めた。
そうして辿り着いたるは…。
「そういえば此処って入った事無いもんなあ」
そう呟いてクラウドが足を忍ばせたのは、セフィロス宅の中で最も汚いとされているある一室―――まあ特別名付けるとすれば「倉庫」みたいなものだろう。
廊下の途中にドアがあるその部屋は3畳くらいの狭いスペースで、そこににビッシリと荷物が置かれていた。その積み重ね方たるや並じゃない、ある意味プロ級である。
ドアを開けると絶対に一つは物が落ちてくるこの部屋は、ちょっとでも間違うと途端に雪崩が起こることうけあい…つまり非常に危険な部屋だったのである。
因みにその部屋に収納…というよりも満員電車の如く押し込まれている可愛そうな住人はといえば、何だか古い剣だとか古い書物だとか胡散臭そうな集団であった。
その胡散臭そうな集団をじっと見詰めたクラウドは、先程輝かせた目を一気に曇らせると、思わず溜息などを吐いてしまう。何しろこれを見ていたら30分なんて直ぐに終わってしまう。
でも…やるしかない!
「よしっ!」
元はといえばザックスから言われただけだというのにいつの間にかすっかり「やらなきゃいけない」という使命感に燃えていたクラウドは、意を決してその山にズシャッと手を伸ばした。
――――――が、しかし。
その瞬間、悲劇は起こってしまったのだ。
「うわああああ!!」
どうやらその悲劇は、クラウドの叫び声とズダダダダという素敵な雪崩音をセフィロス宅に響かせた。
そして、ついでに第二の悲劇が起こる。
それは唐突にクラウドの背後から降りかかった、もしかすると一番の悲劇だったかもしれない。
「―――――おい、お前。何やってる…?」
…それは、ある一つの聞き覚えある声。
「ぎゃああああああああああ!!」
それを耳にしたクラウドは、ギョッとして最高級の叫び声を挙げたのだった。
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