くだらない言葉【ツォンルー】

ツォンルー

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■SWEET~SERIOUS●SHORT
某心理学サイトによれば、愛しているかどうかを問う人ほど相手を愛していないそうであります。虚しいとわかっていてもそうせざるを得ないちっぽけな心。

くだらない言葉:ツォン×ルーファウス

 

何の価値もない下らない言葉。

だけどその一言だけで、自分は価値を得ることができた。

ここにいるんだ、ここにいていいんだ、と思えた。

 

「なぁ、下らないことをきいてもいいか?」

 

下らないこと?

やつはそう聞き返した。

ああ、そうとも。

とてもくだらない。

仮に世の中がこれを大切にしたとて、私は下らないとしか思えない。だからそうとも、これは下らない話だ。

 

「一体なんでしょうか?下らないことをわざわざ聞かれるその真意は」

「こざかしい考えを口にしないでくれ。気が削がれる」

「これはこれは。失礼しました」

「そういう態度もむかつくな」

 

やつは、困ったように笑った。

いや、困ったように笑った――ふうに見せ掛けた。

 

ツォンは優秀だ。

以前は情にほだされることがあったが、今はもう違う。感情に支配されなくなったとき、否、感情を殺す方法を会得するとき、人間は真実に優秀になる。

優秀であることは精巧なロボットであることと同じだ。ミスのない計算。無駄のない動き。もはや人間である必要性はない。

優秀な彼は、私をがっかりさせるようなことはしない。常に、私がほしい言葉をチョイスする。

 

さっきのは?

ああ、あれはちょっとしたジャブ。

私が皮肉を口にしたがっているのを、彼は察知したのだ。

 

「下らないことだが…おまえは私を信用しているか?」

「信用、ですか?」

 

ツォンは少し意外そうな顔をしてから、もちろんです、と答えた。それはごく真面目な顔で、遊びはない。

ふうん、おまえは私を信用するのか?

わかっていたが、なんだか嬉しい気分になった。どうせツォンはそう答えるとわかっている。だからこれは、私が言わせているに過ぎない言葉なのだ。

 

「じゃあ、もっと下らないことをきこう」

 

私はほどなくして、そう口にした。

私のほうを見やるツォンの瞳は、こちらが問う前から答えを知っているふうでなんだかイヤだった。が、それでもやはり止められない。

 

ああ、ほら、定型句だ。

そうだろう、ツォン?

私も、お前も。

 

「なあ、おまえは私を愛しているか?」

 

何度となく問うてきた。

イヤになるほど問うてきた。

下らない、バカらしい。

そう思っているのに、私には定型の解答が必要だったのである。

 

「はい、心から」

 

ツォンは、今度は意外そうな顔一つせず、すぐに笑顔になって、まるで感情を取り戻したみたいに優しげな口調になって、その定型句を口にした。

 

「そうか」

 

なんて下らないのだろう。

私の心は、定型句の解答に喜びを感じていた。待ちわびた言葉にたどり着いたというふうに歓喜に奮えた。

しかしそれと同時に、何か果てしなく深い虚しさを覚えてもいた。

 

「ありがとう」

 

愛していると、そう言ってくれるだけでよかった。嘘でも何でもよかった。ただその言葉を受けるだけで、愛を下らないと感じているこの心が、そして自分が、必要とされているような気がしていた。

 

END

 

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