Diary of CLOUD / 初めての「あなた」
そこは、いつもと違う場所だった。
アナタのプライベートな部屋に入るなんて、何だか不思議だね。
これは、俺からの初めての誘い。
アナタは不思議そうにしていたけど、結局俺と会ってくれた。
しかも部屋まで入れてくれた。
ねえ、どういう風の吹き回し?
やっぱりアナタらしくない、って思う。俺は間違ってるかな、教えてよ。
アナタの長い髪に初めて手で触れた。
アナタの薄いキレイな輪郭の唇に、初めて触れた。
アナタの手に―――初めて触れた。
『……何をしてるんだ』
俺の行動にアナタは戸惑ってる。
そうだよね、おかしいったらないよ。
俺の方からこんなふうに誘うなんて、イカレてる。
だけど、そうさせたのはアナタなんだ。
分かってる?
アナタは凄くヘンな表情をしたまま、手を動かそうともしない。
俺がココまでしてるってのに、これからしようとしてるコトすら分かってないみたいに。
どうしたの?
俺は凄く不安になった。急激に怖くなった。
もしかして“アナタ”はどこかに行ってしまったの?
俺をあれだけ見下した目。
俺をあれだけ陵辱した口。
俺をあれだけイかせた身体。
冷徹、残酷、愛情の欠片すらない、あの雰囲気―――――。
今の俺をくれたアナタが…。
ねえ、いないよ?
『お前は少し、気が動転してるんだな』
そんなふうに言う口が、とても憎らしかった。
大丈夫だ、なんて言いながら伸ばされた手が、とても汚いと思う。
だから俺は咄嗟にキスしてやった。
『……!』
それから乱暴に服を脱がせて、俺はアナタのアソコを弄り始める。
メチャクチャなふうに取り出して、思う存分に吸い付くと、俺の唾液でベトベトになったソレが持ち上がった。
『――――』
アナタは何も言わなかった。
あの時みたいに見下してくれるなら、淫乱とでも言ってくれるならまだ安心できたのに、その目は何だか憐れな猫でも見てるみたいに、コッチを見てる。
――――何だよ、その目は。
ムカツクよ。何で応えてくれないんだよ。
アナタは仕方無さそうに俺の身体を持ち上げて、それからキレイな手つきで俺の股間を愛撫し始める。
愛撫、だって。笑っちゃうよ。
優しすぎて、気が狂うよ。
それでも懐かしいカンカクに、俺は正直だった。
そのまま後ろのアナに指が動いて、やっと突っ込んでくれる。
あんまり動きがユルいから、俺は何だかイラ立つ。
もっと強引に、血がドロドロに出ちゃうくらい…メチャメチャにしてくれればイイのに。
だから俺は、なるべく自分で腰を振ってやった。
それでも全然足りないけど、まだマシかな。
『…一回きりだぞ』
そう言ってアナタは俺の中にズッポリと入ってきた。
あんなにしっかりと慣らされたもんだから、痛みなんかあったモンじゃない。
嫌になる。
腰が優しくて、指が優しくて、唇まで優しい。
苛立つのと反対のところで、きっとコレがアナタの体温なんだろうなあと思った。
今迄そんなの、感じたコト無かったのにね。
変なの。
『痛いか?』
そう聞いてくる言葉に、俺はいつかのザックスとのセックスを思い返した。
気遣いの言葉を忘れない人達。
気持ち良いと思うけれど、やっぱり嫌だった。
俺はそんなの欲しくない。いらない。
欲しいのは、俺を淫乱って言ってた、あの人だけ。
あの人が、あの人だけが俺をイかせてくれる。
俺を壊してくれる。
だから“この人”は違う。
同じ顔を持った、別人だ。
そんなのは――――いらない。
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