Diary of CLOUD(12)【セフィクラ】

*Diary of CLOUD

Diary of CLOUD / 初めての「あなた」

  

そこは、いつもと違う場所だった。

アナタのプライベートな部屋に入るなんて、何だか不思議だね。

これは、俺からの初めての誘い。

アナタは不思議そうにしていたけど、結局俺と会ってくれた。

しかも部屋まで入れてくれた。

ねえ、どういう風の吹き回し?

やっぱりアナタらしくない、って思う。俺は間違ってるかな、教えてよ。

 

アナタの長い髪に初めて手で触れた。

アナタの薄いキレイな輪郭の唇に、初めて触れた。

アナタの手に―――初めて触れた。

 

『……何をしてるんだ』

 

俺の行動にアナタは戸惑ってる。

そうだよね、おかしいったらないよ。

俺の方からこんなふうに誘うなんて、イカレてる。

だけど、そうさせたのはアナタなんだ。

分かってる?

アナタは凄くヘンな表情をしたまま、手を動かそうともしない。

俺がココまでしてるってのに、これからしようとしてるコトすら分かってないみたいに。

 

どうしたの?

俺は凄く不安になった。急激に怖くなった。

 

もしかして“アナタ”はどこかに行ってしまったの?

 

俺をあれだけ見下した目。

俺をあれだけ陵辱した口。

俺をあれだけイかせた身体。

冷徹、残酷、愛情の欠片すらない、あの雰囲気―――――。

 

今の俺をくれたアナタが…。

ねえ、いないよ?

 

『お前は少し、気が動転してるんだな』

 

そんなふうに言う口が、とても憎らしかった。

大丈夫だ、なんて言いながら伸ばされた手が、とても汚いと思う。

だから俺は咄嗟にキスしてやった。

 

『……!』

 

それから乱暴に服を脱がせて、俺はアナタのアソコを弄り始める。

メチャクチャなふうに取り出して、思う存分に吸い付くと、俺の唾液でベトベトになったソレが持ち上がった。

 

『――――』

 

アナタは何も言わなかった。

あの時みたいに見下してくれるなら、淫乱とでも言ってくれるならまだ安心できたのに、その目は何だか憐れな猫でも見てるみたいに、コッチを見てる。

 

――――何だよ、その目は。

ムカツクよ。何で応えてくれないんだよ。

 

アナタは仕方無さそうに俺の身体を持ち上げて、それからキレイな手つきで俺の股間を愛撫し始める。

愛撫、だって。笑っちゃうよ。

優しすぎて、気が狂うよ。

 

それでも懐かしいカンカクに、俺は正直だった。

そのまま後ろのアナに指が動いて、やっと突っ込んでくれる。

あんまり動きがユルいから、俺は何だかイラ立つ。

もっと強引に、血がドロドロに出ちゃうくらい…メチャメチャにしてくれればイイのに。

 

だから俺は、なるべく自分で腰を振ってやった。

それでも全然足りないけど、まだマシかな。

 

『…一回きりだぞ』

 

そう言ってアナタは俺の中にズッポリと入ってきた。

あんなにしっかりと慣らされたもんだから、痛みなんかあったモンじゃない。

嫌になる。

 

腰が優しくて、指が優しくて、唇まで優しい。

苛立つのと反対のところで、きっとコレがアナタの体温なんだろうなあと思った。

 

今迄そんなの、感じたコト無かったのにね。

変なの。

 

『痛いか?』

 

そう聞いてくる言葉に、俺はいつかのザックスとのセックスを思い返した。

気遣いの言葉を忘れない人達。

気持ち良いと思うけれど、やっぱり嫌だった。

 

俺はそんなの欲しくない。いらない。

欲しいのは、俺を淫乱って言ってた、あの人だけ。

あの人が、あの人だけが俺をイかせてくれる。

俺を壊してくれる。

 

だから“この人”は違う。

同じ顔を持った、別人だ。

そんなのは――――いらない。

   

  

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