眠るために【レノルー】

レノルー

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■SWEET●SHORT

眠れないときの特効薬??ある意味では特権かも。


眠るために:レノ×ルーファウス

 

眠れないから傍にいてくれ。

そう言われ、レノはルーファウスの傍にいた。詳しく言うと、ルーファウスの寝ているベッドの隣におかれている丸椅子に腰を下ろしていた。

時間は十二時、丁度今日が終わり、丁度明日が始まったところである。若しくは、昨日が終わり、今日が始まったところだ。

 

「悪いな、こんな退屈なことさせて」

「いーえ、別に。全然ヨユーだから」

 

レノは手のひらをひらひらやりながらそう返す。

が、実際それは、ルーファウス自身が言ったように退屈な作業に違いなかった。だって、人が眠るのを待つだけなのだから。

それに、ルーファウスが眠ったからといってレノの一日が終わるわけではない。この後もやりたいことがそれなりにあるのである。

 

「にしても珍しいな。フツーは反対だろ。人がいたら眠れないだろ」

「そうか?人がいたほうが安心できるじゃないか」

「ふーん、俺は落ち着かないけど」

 

人によって色々あるもんだな、とレノは感心する。まったく正反対のことがこうして世の中には当然のようにあるわけだ。

そんなふうに感心するレノの前で、人がいると安心すると言うルーファウスが、ベッドの中からそっと腕を出して言う。

 

「なあ。手、繋いでくれないか」

「手?」

「眠ったらすぐに離して良いから。眠るまで繋いで欲しいんだ」

「ふーん。わかった」

 

レノはルーファウスの希望通りに、差し出された手をぎゅっと握った。

初めて握った手はただ単に人間の手というだけで、これといって特別感慨はない。しかし一つ思ったのは、手も皮膚なんだなということだった。それは温かく、生々しい。

 

「手なんかイツぐらいぶりに握ったかな」

 

レノが首を傾げてそう呟いたとき、恐るべきことにベッドの上から静かな寝息が漏れはじめた。

 

「早!」

 

よほど安心できたのだろうか?

この手が?

 

眠ったら離して良い。

そう言っていたことを思い出して、レノは繋がっている手に目を落とす。それは本当なら今すぐに離していい手であり、もう必要ない手である。

それなのに、なんだかその手を離すのは惜しい気がした。

このまま繋いでいたらやりたいこともできないし、そんなのはごく自分に不利益だと思ったが、それでもなんだか惜しいと思ったのである。

 

「ま、たまにはこーいうのもいっか」

 

レノは握った手を見詰めながら、この後の予定を全て諦めることに決めた。そして、繋いだ手をそのままに、自分も寝てしまおうと思った。

惜しいなら、そのままにしておけば良い。

どうせ動けないならば、このままここで、じっと動かず、ルーファウスと一緒に寝てしまえば良いのである。

 

「ちょっとだけ、気持ち分かるかもな」

 

レノはちょっと笑った。

人が傍にいた方が安心すると言うルーファウスの気持ちが、このときだけは分かったような気がしたから。そして、その気持ちがちょっと分かったのは、ここが安心できる場所だったからだろうな――――と、思ったから。

 

眠れないなら、傍にいてあげる。

眠れないなら、手を繋いであげる。

 

その代わりいつかは、「人がいたほうが安心できる」の「人」の部分に自分の名前を代入させてやる、と思うレノだった。

 

END

 

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