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恋愛主体なのでSWEET表示にしてます!途中小説救済で、単なるワンシーンです。(※一応、ネタ的に18禁です)
残酷な関係:レノ×ルーファウス
相性はピッタリ。申し分ない。
身体が満たされれば心も満たされる。
約束はないから束縛もない、だから面倒なことも一切ない。
だからこれは一番理想的な関係なのだろう。
「取ってくれ」
簡潔なその一言に、レノは「はいよ」とシャツを投げる。投げられたシャツは見事ルーファウスの手に収まり、やがてその体をぴったりと包んだ。
気だるい午後三時。
任務中のレノを呼び出しての他愛無い情事。
だけれどそれも最早慣れたもので、こんな関係ももう三ヶ月は継続している。別段恋人ではないが、無いと辛抱できないくらいには重度の関係。それは大方体の繋がりというだけで特別心までを支配されるような類のものではなかった。勿論、重度というからにはそれなりに依存心はあるのだろうが、それでも恋人ではないとハッキリ言い切れるくらいには希薄である。
そういう不思議な関係にレノがどう思っているのかは、ルーファウスの知るところではなかった。ただ、レノはレノなりに色々な人間と関係を持っているらしいことは知っていたから、きっと彼もまた同じような要領でこの関係に臨んでいるのだろうとは思っている。
恋人ではない。
だけれど…そう、強いて言えば愛人みたいな関係だ。
お互い決まった相手がいるわけではないけれど、それでも愛人みたいな関係。
縛りなどなく、ただその瞬間だけ相手が傍にいてくれればそれで満足――――まあそんな具合だろうか。
「任務に戻るんだろう?」
シャツを着込んだルーファウスは、それでも下半身は何もつけないままで、今まで散々潜り込んでいたベッドに再びその身を擦り入れた。
ルーファウスと違って情事の後そのままの様子で寝そべっていたレノは、やってきたルーファウスの身に腕を回しこむと、んー、どうしようかな、などと呟きながら目を瞑る。さすがに体力不足で眠気が襲っているからそれも仕方ない。
「サボったら、やっぱり怒る?」
「私が?」
「そう。副社長が」
「さあ。別に」
ルーファウスの回答に、ふーん、などと答えたレノは、その後何も言わなかったが、結局暫くは仕事をサボることにしたようだった。それが証拠にすっかり目を閉じている。
そんな様子のレノを見ながら、ルーファウスは自身の体に巻きついているレノの腕を少しだけ恨めしく思った。別に嫌なわけではないけれど、少々窮屈だったから。しかしそれでも外せとは言わない。恐らくそれが、依存心の一部なのだろう。
ベッドは意外と大振りで、二人が寝そべってもまだ十分に余るというくらいのサイズだった。それも当然だろうか、何せ此処はルーファウスの自宅である。ただでさえ広い自宅は、広いベッドを配置しても決して狭くなど感じられない。要するに何もかもが大きく広く作られているのだ。
一般市民からしてみれば快適そのもののその家は、かつてルーファウスにとって窮屈を感じる場所でしかなかったものである。間取りがどうとかサイズがどうとかそういう問題ではなく、もっと根本的な部分で行き詰まりを感じていたのだ。
だけれどそれも、今はすっかりと無くなった。
レノを此処に呼び込むようになって、情事を当然のように重ねるようになってから、それはすっかりと解けてしまったのである。それは当然、ルーファウスにしてみれば喜ばしいことだった。尤も、今そうであるように、たまにレノの腕によって窮屈を感じることはままあったのだが。
「任務終了予定は?」
ベット脇の置時計に目をやって、ルーファウスがそう問う。
すると、目を閉じたままのレノが、
「多分、八時」
と言った。
多分、というのはハッキリした時間が分からないからである。タークスはいつも上司の具体的な指示によって動いているから、状況によっては早くも遅くもなるのだ。
「八時か…まだ十分あるな」
「そういうコト。だからたんまり眠れるんだぞっと」
「レノ、お前完璧にサボるつもりか?どうせまた煩いに決まってる。お前の“デキる上司”がな」
「そーかも」
まあでも別に良いし、そう続けたレノは、本当にどうでも良いといった調子の声音である。だからルーファウスは、それ以上時間については考えないことにした。
現在時刻は午後三時。
そしてレノが帰る予定なのが午後八時。
その間ゆうに五時間はあるわけだが、これは思えば大層な時間である。いつも睡眠をその程度しか取っていなかったルーファウスは、これは確かに睡眠にぴったりだとそんな事を思っていた。
自分もこのまま眠ってしまおうか。
なんとなくそんな事を思って目を閉じた時、ジャストタイムとでもいうのか、ルーファウスの携帯がけたたましく鳴り響いた。それに反応して目を開けたルーファウスは、折角慣れたベット内の温度から脱して、快適で広い部屋の床にぴたり、と足を這わせる。そうして、ウッドテーブルの上に投げ出したままだった携帯電話を手にとった。
「もしもし」
『お疲れ様です』
「?…ツォンか」
どうやら電話の向こうの相手はタークスのツォンだったらしく、ルーファウスはそう答えながらもベットのレノに目配せをする。するとレノは無言で頷きながら挨拶をするように軽く右手を上げた。それを確認したルーファウスはレノから視線を外すと、ウッドテーブルに片手をつきながら電話の向こうの相手に用件を尋ねる。
ツォンからの電話など、滅多なことではありえない。
「…で、私に何か用か。大した用でなければすぐに切る」
『はい、理解しております。実は一点お伺いしたい事があってお電話致しました』
「なるほど。で、何を聞きたい?」
ルーファウスがそうして誘導すると、ツォンは少し躊躇いがちにこんなことを言った。
『はい…その、こんな事を聞くのは筋違いかもしれませんが……レノの所在をご存知でしたら、と』
「レノ?」
わざとその名前の部分だけ大げさに繰り返したルーファウスは、そうした後に当然のようにレノを振り返る。するとレノは、げー、というふうに肩をガックリ落としていた。
それがおかしくて思わず笑ってしまったが、そういえば電話中だったと思い出してルーファウスはすぐさまその表情を変える。さしずめオンオフの切り替えだ。
「さあ?私があの男の所在など知るはずもないだろう。お前は一体何を考えているんだ。くだらない電話など時間の無駄だ。切るぞ」
『そうですか…申し訳ありませんでした。では―――』
失礼します、と続けられる予定だったろう言葉を遮って電話を切ったルーファウスは、それを元のようにウッドテーブルの上に置くと、先ほどの笑いを思い出したようにそれを表情に浮かべる。そしてベットにまで戻ると、珍しく自分からレノの身体に抱きついた。
「はい、バレてます、っと。サイアク」
「良いじゃないか。なかなか面白かった」
「またまた!それスゴク他人事だし」
そりゃそうだろう、そう返してルーファウスはレノの唇を支配する。そのおかげでレノはそれ以上文句を言えなくなってしまった。けれど、レノもそれはそれでまんざらでもないという顔をしている。
少し長いキスを終えると、ルーファウスは自らレノの上に跨った。支配しているのかされているのか分からないようなその格好で、両腕をそっと相手の頬に近づける。そうしてやがてそれがすっぽりと頬を包んだ時、ルーファウスはうっすらと笑った。
レノ曰く、それは極上の笑み、らしい。
「それ、スゴク好き。最高に挑発的」
レノはニヤリと笑って、そんな言葉を返す。
「だったらこれは挑発だ。若しくは、誘惑」
「へえ。じゃあ乗らなきゃ損じゃん?」
頬を包んでいたルーファウスの腕を解いたレノは、先ほどまでの眠気などどこかに飛んだとでも言うようにルーファウスの腰に手を回す。それはレノにとって触り慣れた、だけれどいつまで経っても魅惑から外れない肌だった。
「でも何でかなっと。いきなりヤりたくなった?」
腰から這いあがったレノの指は既に胸の突起を愛撫しており、その言葉を助長させるかのようである。
それを受けながらルーファウスは、レノの好きな笑みを浮かべつつ「そう」と頷いた。
「急に欲情した」
「何ソレ。ツォンさんの声が興奮剤になったってコト?」
「そうかもな。…ああいう声は、興奮する」
レノを前にして悪びれもなくそう言ったルーファウスは、既に陶酔を始めているふうである。だからなのか、それともこの関係自体が縛りないものの為なのか、レノは「あーあ」などと軽く愚痴をこぼしながらも笑う。それは酷いな、と付け加えて。
気だるい午後に、二度目のセックス。
それは約束のない、とても自由な関係。
相性はピッタリ。申し分ない。
身体が満たされれば心も満たされる。
約束はないから束縛もない、だから面倒なことも一切ない。
だからこれは一番理想的な関係なのだろう。
だけれどきっと、
―――この世で最も残酷な関係。
END