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■SERIOUS●SHORT
セフィロスだけが、俺の幸せなんだ。どこにも、行かないで。
Define:セフィロス×クラウド
誰かが間違ったアクションをして、
誰かが間違った解釈をして、
そのとばっちりが自分にやってくる。
例えば、俺が誰かの事を少し苦手だとする。
それでも俺はその人のことが好きだとして…
そこで誰かが間違ったアクションをして、間違った解釈をする。
『クラウドはXXが嫌いなんだってさ』、っていうふうに。
だから、そこから話が飛躍するわけだ。
『クラウドはXXとは話したくないらしいから、XXは会合に呼ばないでおこう』
それから幾日か過ぎて、XXが俺に言う。
「お前のせいで今じゃハミダシ者だよ」
皮肉めいてそう言う。
そして、間違ったアクションをして間違った解釈をした彼らは、大体自分を守るためにこう言うんだ。
『だってクラウドがそう言ったからさあ』
―――――ねえ、どう思う?
俺は嫌いなんて一言も言ってないんだ。解釈を誤ったのも、間違った言葉を使って俺の心を踏みにじったのも、彼らの方なんだよ。
それでも俺は悪者だ。
俺は誰にも理解されないんだろう。
そういう間違った解釈が大好きな誰かが、自分の姿に気付かない限り、俺は一生馬鹿を見るんだ。俺は独りだ。
俺はね、独りさ。
男は女よりさっぱりしてるんだって言う。
だけどこれだけ男が集まれば、やっぱり分断される部分があるんだ。
だから俺達兵士は、仲が悪いグループもあれば仲が良いグループもある。俺は中立でいたかったけど、それでもやっぱりどこかに“所属”しなくちゃならなかった。
だから俺は、やや中位の仲間のグループに“属して”いた。
そういう生活は嫌気が差す。
どこどこのグループの誰々はどうだとか、あいつは駄目、あいつは良い、とか。そんなことばっかり話しても、だから何だって感じだ。
そう思うなら堂々と言えば良いのに、陰口を叩いておきながら、本人を前にしたらゴマスリ笑顔なんか見せてる。
俺はその隣にいて、本当にそういう生活が嫌になってた。
でも、それを見て見ぬ振りをしてる奴も、大嫌いだった。
俺が俺の望んだ生活に嫌気が差していた時、支えになってくれたのはセフィロスだった。
俺がそういう弱音を吐くと、大体セフィロスは心配そうな顔をして、だったら俺の家に来れば良い、と言ってくれた。
だけど実際セフィロスの家に行ったところで、訓練に行ったら俺はあのグループに属さなきゃならない。だから俺は、結局どうあがいても同じだって思ってた。セフィロスにもそう言った。
でもセフィロスは、だったら訓練など受けなければ良い、と言った。
さすがに俺もその言葉にはビックリした。だって俺が此処にいる意味が、それでは全く無くなってしまうんだから。
俺が神羅に入ったこと、そして兵士として頑張っていること。
そういう事を考えたら、やっぱりその決断はできなかった。
でも普段の生活をセフィロスの家で過ごせたら、せめて嫌な気分は減るかもしれないと思ったんだ。
つまりこう考えれば良いんだ。
【嫌なこと+幸せなこと=100】
こういう定義があるとする。
それらは常に100でなければならないとして、今の俺は多分、
【嫌なこと:幸せなこと=90:10】
って感じがする。
でもセフィロスの家でセフィロスと一緒に暮らして幸せな時間をいっぱいいっぱい感じることができたらきっと、
【嫌なこと:幸せなこと=20:80】
くらいにはなると思う。
それは決して嫌なことが減ったわけではなくて、幸せなことが増えたから嫌なことの割合が減ったって感じ。だから解決って感じじゃないけど、楽しく過ごすためには良いと思う。
そう考えて俺は、セフィロスの家で一緒に生活することにした。
セフィロスの家には色々なものが揃っている。
部屋も広いし、俺一人が増えたって何でもないって感じなんだ。
兵舎の俺の部屋はすごく狭くて、ベットとデスクがあるくらいの大きさだ。だからそこで何かしようとしたってそうそうできたもんじゃない。
訓練が終わって部屋に帰ると俺は必ず疲れてて、嫌な気分になって、ぐったりする。それだけじゃなく、考えこんでしまう。
何で好きなことをしているのにこんなに嫌な気分になるんだろうって、そう考えてしまうんだ。それで、そういう自分の考えに疲れ切るんだ。
セフィロスの家は、俺にそういう嫌な時間を与えない最高な空間だった。例え訓練で嫌な気分になろうとも、家に帰ってくるとセフィロスがいて幸せな気分になれる。
そう考えると俺は、その生活にわくわくして気分が良くなった。
最初その生活を始めた時、セフィロスの家にはザックスが良く遊びに来ていた。俺が此処に住み込むことを知って、ザックスはわざわざ遊びに来てくれたらしい。
此処は無法地帯だから、なんて笑ってザックスはよくお酒を持ってきてくれた。
ワインとかウイスキーとかだ。
でも俺はそういうの飲めなくて、せめてサワーにして欲しいななんて思いながらも付き合って飲んでた。兵舎内は基本的に禁酒で、特に俺みたいな未成年には厳しい。
だからザックスが言う通り、俺にとって本当に此処は無法地帯だったんだろう。
毎晩、騒いでた。
毎晩、楽しかった。
ザックスが帰った後は、ちょっと酔った中、セフィロスと二人きりで時間を過ごした。今日あった嫌なことをちょっと口にしたりしたけど、大体そんなことどうでも良かった。
セフィロスの側にいられることが幸せなんだ。
セフィロスと一緒にいられるだけで俺は満たされるんだ。
そういう時はまったり過ごして、二人で寄り添っていたり、たまに気分が高揚するとそのままベットに行ったりした。
そういう生活は俺を満たした。
とっても、とっても、とっても、満たしてくれた。
側にいたい。
此処にいたい。
離れたくない。
セフィロスだけが俺を癒してくれるんだ。
あの嫌な空気を吹き飛ばして幸せを運んでくれるんだ。
そう分かっているから、俺は訓練の後は駆け足で帰ってくるようになっていた。
そんな飴と鞭みたいな生活の中、俺は訓練の合間に事件に遭った。
事件っていっても殺傷事件とかそういう殺伐としてるものじゃなくて、単に人間関係のいざこざだったんだけど。
兵士仲間で会合を開くだとかいう話があるらしくて、それに俺も来いっていう話だった。
別にそれはそれで良かったけど、やっぱり俺は基本的にそんな場所には行きたくないって思う。何故かっていえば、そういう会合自体、結局あのグループの中だけのものだからだ。
好きなグループ同士が集まって会合をするなんて、最後には愚痴の言い合いになるに決まってるんだ。そういうのが目に見えてたから俺は、行かない、って断った。だけど友達はその俺のリアクションに嫌な顔をして説得なんかし始める。
俺はそんな会合よりもセフィロスと一緒にいたいし、なによりその方が安全で安心で幸せだ。
「そんなこと言うなよ、クラウド。何せ会合の主催はレンだぜ」
「レン?」
ああ、そんな人もいたかな。俺のグループではないしクラスも違うからすっかり抜けてた。
そのレンって人は兵士仲間の中でも一目置かれているリーダータイプだ。容姿も良いし、腕前も良い。俺も密かに格好良いななんて思ってたけど、実はちょっと苦手だった。
何でかっていうと、俺とはタイプが違う人間だからだ。
だから別にレンが嫌いとかレンが悪いことしてるとかそういうんじゃなくて、ちょっと一緒にい難いタイプだな、ってそういうことだった。
それを聞いた友達は「そうだったんだ?」なんて言ってたけど、それがそもそも間違いだった。俺の気持ちなんて、分かってくれるような相手じゃなかったんだ。
その友達は俺の言葉に間違った解釈をして、俺がレンの事を嫌ってるから会合に出ない、と色々な人に触れまわった。勿論それは、当初は悪気なんか無かったに違いない。
「レンと顔を合わせないようにしてやらないと、クラウド可哀想だよな」なんて言って、まるで彼らは俺の為にそうしてるかのようだったんだ。
でもその噂は広まって、いつしか俺はレンとめちゃくちゃ仲が悪いことになっていた。顔も見たくない、話したくもない…そう俺がレンに対して思っているってことになってた。
俺は実際にはレンに対してそんなことは思ってないし、レンにそう思って欲しくもなかった。でも俺が今更レンにそんな事を言い訳しても、もうどうにもならない状況だったんだ。
レンはある日、俺に言ってきた。
「お前のせいで今じゃハミダシ者だよ」
皮肉めいてレンはそう言う。
俺ははっきり言ってビックリした。だってレンはリーダーシップを取っているような人物なんだから、俺が批判されるならともかくレンが批判されるなんて考えられなかった。
それでも事態は急変していたらしい。
レンはいつの間にか、独りぼっちになってたんだ。
しかも、今までレンと仲良かった奴らまでこんなことを言ってたらしい。
「お前いっつもエラそうなんだよな。今までずっとそう思ってたんだよ!」
便乗してそんな中傷を浴びせる奴らに、俺は何だかムカついた。でも俺がそいつらに何かを言ったとしても結局同じことだったんだ。
「お前もエラそうなんだよ。会合に来ないとかいって調子こくなよな。お前レベルじゃ絶対参加に決まってんだろうがよ」
俺はそんな言葉を浴びせられて、本当に嫌気がさした。でも事の始まりについてちゃんと誤解を解いておきたくて、友達のところに走る。それで、どうしてレンの話を振りまいたんだって、そう聞いた。
そうしたら彼らは言ってた。
「えーだってさあ、レンってエラそうな態度取るじゃん?クラウドがこれから先、レンのそういう態度で嫌な気分になるんだったらさあ、ココラ辺で叩いておかないとってさあ」
叩いておかないと、ってどういうことだよ?
俺はそう思った。
大体あの会合だって仲の良いグループだけのものだったんだから、レンと彼らも結構仲は良かったってことになるんだ。それなのに。
それどころかもっとショックだったのは、彼らについて他の人からあることを聞いた時だった。
なあクラウド…あいつらこんなこと言ってたぜ、そう言ってこっそり教えてくれた。
『だってクラウドがレンのこと嫌いだって言うからさあ、仕方なくハブったんだよ』
――――ねえ、どう思う?
俺は嫌いなんて一言も言ってない。解釈を誤ったのも、間違った言葉を使って俺の心を踏みにじったのも、彼らの方なんだよ。
彼らは自分が非難されることだけは避けて、言いたい放題。
それでも俺は悪者だ。
俺は誰にも理解されないんだよ。
そういう間違った解釈が大好きな虫が、自分の姿に気付かない限り、俺は一生馬鹿を見るんだ。俺は独りだ。この兵舎にいてもこの兵士仲間の中にいても、結局一人なんだ。
そうやって馬鹿を見続けるくらいなら、いつだかセフィロスが言ってくれたみたいに訓練なんかやめてしまいたかった。
あいつらの顔なんか見えない場所にいきたかった。
それでも俺はセフィロスと一緒にいたくて、その為には俺は絶対に神羅を辞めちゃいけないんだ。
だから俺は、幸せの定義をこうすることにしたんだ。
【嫌なこと:幸せなこと=(0):(100)】
これで俺は全てが全て幸せでいられる。
これはどういう事かっていうと、嫌なことがあったとしても俺は認めない。
だから例えば数値が30とか40であっても( )内に入る。この( )は透明だから、俺は基本的に常に幸せが100ってことになる。
もう俺は幸せしか認めない。それ以外のものは認めない。
セフィロスといる時間以外は、俺は絶対に認めたりしない。
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