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■GAG●SHORT
ある日「肉を食うな」という変な約束をさせられたクラ。その理由とは…?
兵士よ肉を食うなかれ!:セフィロス×クラウド
一つ、約束しよう。
そう言われたのでクラウドは取り敢えず首を縦に振った。何を約束するか分からないというのに、安易ながら頷いたのである。
―――――して、その約束とは。
「肉は食うな」
―――――はい…?
恐ろしいほど真面目な顔で微塵も笑いもせずにそう言ってきたセフィロスに、クラウドはぽかんと口を開けざるを得なかった。
何故に、肉?
肉、食うべからず。
その約束はあまりにも、そりゃもうあんまりにも意味が分からなかったが、しかし「うん」と頷いてしまったものを今更変えられない。今さら首を横に振ろうと取り消しできない。
というわけで。
「…はあい」
良く分からないままクラウドはそう言ったのだった。
さて、肉を断つよういわれたクラウドは健気にもそれを実行していた。
しかし…しかし、である。
パワーみなぎる兵士諸君にとって肉という食物がどれだけ尊い存在かというのは言わずもがな周知の事実であろう。
という訳であるからして、この事態はクラウドの周囲の兵士諸君には度胆を抜かれるほどありえない状況だった。
しかし、悲しいかなありえてしまうところがクラウドである。
ある日の昼食時、クラウドのヘルシーメニューを見た同僚は言ったものだ。
「…どした、お前。ベジタリアンになったんか?」
そういえばそういう言葉もあったなあなどと思いながら、クラウドは、ううん、と首を振る。
だって、何しろコレは自分がしたくてしている訳ではないのだから。
いつもだったらガッツリ食いなのに、こうなってしまってはほっそり頂きます状態…これは確かに成長盛り食べ盛りのクラウド少年には痛いといえば痛い仕打ちであることは確かで。
そして勿論、クラウド少年も肉というものが好きだったりした訳で。
「…何で肉、食べちゃ駄目なんだろ…?」
「何だよクラウド。自分の事だろ?」
「うーん…そうなんだけど良く分からないや」
「……」
―――――そう…クラウドは今頃になって、何故そうしてはいけないのかという普通誰もが一番最初に考えるであろう部分を気にしだした。遅すぎる。
しかしとにかく今になって疑問への答えが欲しくなったクラウドは、それを知るべく、情報源であるセフィロスの元へ向かおうと決意したのだった。
何故ってそれは単純。
結局のところ、クラウドも肉が食べたいのである。
「…うん。肉だよな、肉!」
そう一人で頷いたクラウドは、暫く止まっていた手を動かし、食事の続きをし始めた。
「うん、オイシイ!」
嬉しそうにクラウド少年が頬張ったのは―――――野菜、だった…。
そんなこんなで菜食人となったクラウドだったが、取り敢えず理由を追求すべくセフィロスの元に向かうことは忘れなかった。いと尊き肉の存在を、彼はまだ忘れていなかったという事である。
ちょっとコバラが空いたなどといって、少年が野菜チップスなどを頬張りながらセフィロスの所まで辿り着き、更にその話題が始まったのは夕方にさしかかった時だった。
セフィロスはクラウドの突然の訪問に喜び勇んでいたものだが、その内容が例のことだと知ると少し怪訝そうな顔をした。
しかも、そんなに肉が好きか、なんてため息混じりに言われた日には、はい好きですなどと真顔で答えるわけにもいかない。
っていうか、むしろ貴方はそんなに嫌いなんですかと問いたい。
とはいえさすがにそれらを言えなかったクラウドは、結果的に黙り込む事となった。
そんな沈黙状態が続いたのでその場は少々気まずいムードに包まれたが、やがてその沈黙を破るべくセフィロスが口を開く。
そしてその口から出てきた言葉は。
「―――――最近、神羅幹部の中で流行っている事を知ってるか?」
「は?」
何故に幹部?
というか、一般兵の俺が高級官僚の趣味なんて知るわけないよ、とクラウドは言いたかった。
しかしそれを言う前にセフィロスのため息が漏れ、さらには言葉が続いたので、残念ながらそのツッコミ…いや、真摯な否定は無かった事に終わる。
セフィロスは明後日の方向を見やりながらもう一度ため息をつくと、こう語り始めた。
「最近……神羅幹部の中では健康ブームが沸き起こっている…」
「けっ……健康ブーム??」
「そうだ。それ故に健康マニアになる者、はたまた健康を手玉にとって健康を売るもの、それどころか健康マニアになるべく時間を惜しみ勉強をした結果健康を害し入院したなどという大馬鹿者までいる」
「……」
「という訳だから、奴らの健康マニア度は並じゃないと分かるだろう」
「はあ……まあ」
しかしそれが肉禁止令とどう繋がるのかが良く分からない。
そんな疑問が渦巻くクラウドにセフィロスが返した言葉といえば、コレである。
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