女ほどではないにしても、滑らかに指を吸い付かせるその肌は、セフィロスの行為を簡単に受け入れてくる。慣れは勿論あったけれど、そうする度にその肌は欲求を昂ぶらせた。
すぐに先ほどの続きをするように鎖骨に口付けると、その辺りを唾液混じりに舌で愛撫する。少し上の柔らかい部分に戻って、その舌は唇の中に舞い戻りながら今度はきつく吸い付いた。
それが数度繰り返されると、そこには何個もの内出血をした跡が残る。ほんのりと紫に変色したそこは、セフィロスがくれる気持ちの証明のような気もする。
本当は隠すのが大変だからと嫌な時もあったけれど、それでも嬉しいと思う。そうしながら跡を残して、セフィロスの指は、胸の小さく突起した部分を探り始めた。びくん、と身体が反応してしまう。
「あっ……」
思わず上げた声に、転がすようにセフィロスの指は愛撫を強める。先端を軽く擦ったかと思えば摘み上げるように弄ったりする。そうする内にぷっくりと持ち上がったそこに、湿った感覚が沸き起こった。
あまりに滑らかで、今までと違った感じにピクン、とまた身体が動く。
「んんっ」
「バカ、まだこれだけしかしてないぞ」
そう言うのに眉を寄せて、だって、なんて答えながら、続いている愛撫に腕の力を強める。
何度も何度も回すように舐め上げられると、堪らなくて思わずクラウドは相手の顔を引き寄せた。
「何だ、嫌か?」
「ううん…キス、して」
そう熱っぽい声で呟くと、セフィロスはクラウドが望むままに口付けをした。それにはさっきのような新鮮さは無く、その代わり激しさがあった。
追い掛け回すような舌先が、クラウドの口内を隅々まで探ってくる。
「あ、ふっ…ん」
口の端から息が漏れて、それがセフィロスの耳を掠めた。まだ何もしてないも同然だというのに、クラウドの顔はもう既に恍惚としている。
その感じやすさはセフィロスが今まで抱いてきた誰とも違っていて、それがどうも自分の欲求を昂ぶらせるのだと、セフィロスは何となく分かっていた。
今だってそれは変わらない。ちょっとした愛撫だけで直ぐに落ちてしまうのは、堪らない光景だった。
唇を絡ませるその間に、弄んでいた突起から指を離すと、半開きだった足をグイと押し広げてやる。太股を優しく撫上げると、それにも反応して足を閉じようともがき始めた。
「ん、んんっ!」
何か反論したそうにする口を少々強引に唇で塞ぎこんで、抵抗する足を固定させる。その間に身体を割り込ませると、セフィロスは巧みにその足を持ち上げた。
首に巻きついていた腕が、ドンドン、と背中を叩き、何かを訴えている様子である。
仕方なく唇を離すと、はあっ、と息を吐き出してクラウドはセフィロスを睨んだ。とはいっても別に悪意がある睨みじゃない。拗ねるような目つきである。
「これ…やだ」
「コレ、って?」
「…この格好でやるの、やだ」
そう言うクラウドに、セフィロスは思わず笑いを漏らしてしまった。裸になる時にはちょっとした言葉だけで羞恥心を捨てるくせに、どうもこれだけは直らないようである。
いつも大体、クラウドが上にいることが多い。つまり上に跨った状態で二人で果てる事が普通だった。それでもたまにこうしてセフィロスが覆うようにすると、何故かクラウドはそれを嫌がったのだ。
最初は何でかとセフィロスも不思議だった。確かに普通通りの方がある程度は楽だったし、別にそれでも良いとは思う。でも、いつだかクラウドが零した言葉によると、それはやっぱり羞恥心からくる拒絶だと分かった。
つまり、自分が下にいると全てが見られているという感じになるかららしい。その上、こんなふうに足を全開にされて、正に男の部分を曝け出しているのが堪らなく恥ずかしいようなのだ。
「たまには楽させてやろうというんだから、感謝して欲しいもんだな」
「何それ!俺はいっつもの方が……あ、あ、ちょ、と…っ」
言い終わらないうちに、セフィロスの指は曝け出されたその中心を弄り始めた。まだ何もしていないから乾いたままで、どうやらそう簡単には受け入れてくれそうにもない。
仕方ないといったふうに、その上でそこそこに勃起していたそれに手を這わせる。まだ余裕がありそうな柔軟さがあるのをしっかりと包みあげると、最初は緩く、それを動かし始めた。
顔を見ながら、速さを調節してやると、その顔は段々と緩んでいく。眉根を寄せて、苦しいような顔をする。
けれど口から漏れる喘ぎが、全く逆の要求をしているようで、いつの間にか上下する手は思うより早さを増していた。
「いや、あっ、ああっ」
「クラウド、“嫌”は違うだろう?俺の手だ、ちゃんと教えてくれ」
「あ、ああ、セフィ…、っ」
「ほら、ちゃんと俺に聞かせてくれ。お前がどう思ってるか」
そう言いながら、上体を動かすと、さっきも散々舐め上げた首筋にまたキスをする。それは頬のラインをなぞって耳元まで続き、クラウドの耳につけられている青いピアスの元までたどり着いた。
「んんっ、い、…いい…っ」
「気持ち良い?」
こくり、と目を固く瞑ったまま頷く。そんなクラウドを見て、セフィロスはまだ足りないなというように耳元でこう囁く。勿論、手は休むことない。
「こんな事、誰がやったって一緒だろう?どうして気持ち良いか、分かるか?」
「んぅ、ばか…っ」
クラウドは薄く目を開いてそう抗議すると、また元のようにしっかりと腕を巻きつけた。俄か体勢が固められて、セフィロスの手の動きが鈍くなる。
もがいているクラウドのペースに嵌ると、こうして度々自分の体勢が苦しくなり、それは少し難だった。
「こら、ちょっと手を緩めろ」
「や、だ…だって。セフィロスがっ…言った…か、ら」
そんなふうに答えを表して、潤みがちの目を向ける。
大きめな目は、セフィロスを捉えて離さない。そんな自分の心の動きすら読んで、セフィロスは続けてこう言う。
「馬鹿だな。…お前をもっと感じさせてやれないだろ?」
恥ずかしげもなくそう言うのを耳にして、クラウドの方が赤くなった。そんなことを言うものだから、離すに離せなくなる。けれど少しばかり腕を緩めると、下半身を昂ぶらせる愛撫は急激に勢いを増した。
それは徐々に昇ってきていたものを後押しするように、クラウドの中に刺激を走らせる。
セフィロスの身体から思わず腕を離すと、ソファの端に手をかけ、ふわりとした布をギュッと掴み込む。閉じた瞼の中にはセフィロスの顔があって、それは想像の中で舐めるようにクラウドを見つめていた。
ゾクリ、として思わず身体がのけぞる。
そうした後、またどっと何かが昇り詰める。耐え切れない感覚が、身体中を襲っていた。
「あ、セフィ…!もう、駄目…もう、っ!」
急に声を荒げだしたクラウドに、セフィロスは応えるように動かす手を巧みにさせる。
息遣いが荒い。
そろそろ限界か、とクラウドの顔をそっと覗きこむ。
目は固く瞑られていてコチラなどは見ていないが、それでもセフィロスは満足そうに笑んだ。
セフィロスの手の中で絶頂に向かうクラウドの表情は、セフィロスしか見ることが叶わないものだし、何しろそれはセフィロスをゾクゾクさせる。更なる欲求を掻き立てるには十分なその乱れようは、ある意味誘いにも見えた。
「やっ、い…い、っちゃう…っ!」
「良いんだぞ、クラウド」
「あ、あああっ!!」
ソファの端に顔を伏せながら、クラウドはセフィロスの手の中で果てた。
ギュッと掴んだままだったソファの端にはクッキリとした跡ができていて、それは手を離しても戻らなくなっていた。