Diary of CLOUD / そんなのは違う
俺はベットで横たわったまま、あの人の声を聞いていた。すぐ後に入ってきた医者と何か話している。
聞きなれない言葉が並んでる―――ねえ、何の話をしてるの?
ううん、それより…さっきの態度は何なの?
あなたらしく、ないよ。
『やっとコントロールが上手くいくようになってきた』
『そうか。宝条は何と?』
『…多分、今の状態のまま、これからはいけるだろう、と言っていた』
『成程。良かったな、セフィロス』
何の話…?
コントロールって何の事?
俺には全く意味が分からなかった。ただ思ったのは―――そこにいる“あなた”は、とても小さく見えるという、事。あの強い棘のような目が無い。
何処?
あなたは、何処にいるの?
確かに目の前にいるその人は、とても凛としていて綺麗で、俺の憧れてた人に違いなかった。
だけど違う。違うんだ。
そんな優しそうな顔を見てると、俺は気分が悪くなるんだ。ねえお願いだから、いつもみたいに冷たくしてよ。
『それで、今までの事は?』
『いや…あまり良くは―――』
『だろうな。しかしその方が良いだろう。気付かれる前に、夢だとでも思わせてしまえば良い』
訳の分からない言葉は暫く続いてた。そのちょっと後になって、あの人の目が俺の方に向けられる。
やっぱり、違う。
あなたは俺の方に歩み寄って、こんなふうに言った。
『お前――あの日、暴行を受けてた奴だろう?』
え?
俺はビックリした。何で知ってるんだ?
だってあの時あの場所にいたのは…。
戸惑う俺に、あなたはさも優しくこう言う。
『心配するな。あいつらは処分にした。…災難だったな』
俺の頭は混乱した。
何を言ってるんだ。あなたの言ってる意味が分からないよ。俺に憐れみの言葉なんかかける必要ないのに。どうせ仕方無いことなんだ。
そう思う俺に、あなたは最大の裏切りの言葉をかけた。
『俺が見つけて、良かった』
何だって?
“俺が見つけて”?
じゃあ、助けてくれたのは、あなた…?
俺は思い返していた。
意識が朦朧とする中で俺を助けてくれた、あの凛とした声。
あれは、あなただったの?
信じられない、信じたくない。
だって、そんなのは違うよ。そうでしょ?
あなたが俺を助ける?
俺は割れる程、頭が痛くなった。
>>> back