Diary of CLOUD / 何が言いたいの
あれからというもの俺の顔を見てはバツが悪そうにしていたザックスは、どういう訳か俺を呼び出してきた。
少し表情が硬いね、ザックス。
当然かな?
兵舎の奥まで行くと、ザックスは凄く神妙そうな顔をして立ち止まる。
何を言うつもりだろう?
俺が除名される事でも伝えに来てくれた?
黙ったまま待っていると、ザックスはいきなりこんな事を言った。
『お前“キャット”って知ってる?』
ああ、聞いた事―――あるよ。
確か、そう…。
俺に暴行を加えたアイツラが、そんな事言ってたっけ?
でもそれがどうかしたの?
うん、と頷く俺を見て、ザックスは凄く不可解な顔をする。
『お前、そんなふうに呼ばれた事があるのか?』
うん、あるよ。
『どうしてそう呼ばれるか、知ってるか?』
そんなの知らないよ。
俺はそんなの気にして無いし、そう言われたからって、どうって事も無い。
ザックスが神妙な顔をする理由も分からない。
そんな俺に、ザックスはこう言った。
とても、悔しそうな顔で。
『キャットってのは―――猫みたいに、主人に愛想振りまいて、ケツ振ってる……飼い慣らされた奴隷、って意味で使われてるらしい…んだ』
俺はそれを聞いても別に何も感じなかった。
だって、その通りかもしれないし、俺はそれでも「ご主人様」が好きなんだ。
そんな俺の顔を見て、ザックスは続ける。
『キャットは―――セフィロスにそうされてる奴だけだ』
そりゃそうだよね。何てたってあの人は、最高級のソルジャーなんだから。
『…キャットは一人じゃない』
―――― 一人じゃない…。
きっと俺はそこでやっと少し嫌そうな顔をしたんだろう。
ザックスは少し緊張を解いた表情をした。
『お前以外にも、そういうふうにされてる奴らがいるんだ』
ああ、そうなんだ。
そういう事が言いたかったんだね、ザックス。
でも、でもねザックス、俺はそんな事、多分知ってたんだ。
俺はオモチャで、あの人にとっては俺の命すら虫ケラ同然で、ちっとも特別じゃなくて、まるで使い捨ての―――生きた人形なんだ。
あの人の中に特別なんて無いんだろう。
勿論、俺もそんなんになれるハズない。
ねえ、ザックス。
あの人がいかに酷いかを教えようとしてるの?
俺に、拒否しろって、そう言いたいの?
本当は――――何が、言いたいの?
俺がそう思う隣でザックスはポツリと言った。
『俺は―――アイツを、許さない』
悔しそうな顔をしてそう言うザックスが、俺は不思議で仕方なかった。
やっぱり優しいね。
殺すの?あの人を?
―――――ムリだよ。
ねえ俺はね、まだ気になってるんだ。
あの人のこの前の態度、が。
だからね、そういう言葉を言うのはザックスじゃないはずだよ。
ねえ、そうでしょう?
俺は一言だけ、そんなコト言わないで、と口にした。
ザックスはとても意外そうな顔をしている。
ああ、本当の“アナタ”に会いたいよ。
俺の……ご主人様。
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